北アフリカのイスラム国家アルジェリアで、内戦の傷が癒えきらぬ不安定な社会でバレエダンサーになることを夢見る女性の再生の物語『裸足になって』。
前作『パピチャ 未来へのランウェイ』(20)ではイスラム過激派のテロと女性の権利をテーマに、自身も経験したアルジェリアでの壮絶な内戦“暗黒の10年”の時代を描いたムニア・メドゥール監督が今作について語った。
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『パピチャ 未来へのランウェイ』では、ファッションデザイナーの夢をもつ生命力溢れる女性(リナ・クードリ)の視点を通すことで、よりリアルで過酷なアルジェリアの内情を伝えたが、『裸足になって』では、内戦が終わった20年後、“現在”のアルジェリアの社会を描き出している。
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再びアルジェリアを舞台にした理由について監督は「『裸足になって』では、事故による変化に苦しむ若いダンサーの物語を語ることで、現在のアルジェリアの歴史に再び踏み込むことにしたかった」と明かす。
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「私は元々、ドキュメンタリー映画出身ですから、映画でフィクションに書き直すために、自分の記憶の奥や体験に迫るのが好きなのです。私自身、事故でかかとを複雑骨折した後、しばらく動けず、長いリハビリをしたことがあって、孤独や寂しさ、障害、そして何よりも再起について語りたいと思っていたのです」と自身の体験を語る。
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「傷ついたフーリアは再生して、最終的にはもっと強い女性、つまり<彼女自身>になります。耐えることで、より偉大になったフーリアのヒロイン像は、傷つきながらも立ち上がるアルジェリアのイメージも想像して出来上がりました」と思いを馳せた。
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内戦終結から約20年、アルジェリアでは未だ個人の自由や体を使った表現に多くの規制があるという。「ダンスの場合、プライベートな空間ではOKでも、公共の場で踊れる機会はとても限られています。女性の体はタブーなのです」と監督。
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「ダンスをする女性は表現をしたい女性で、習慣や貞操が体系化されている父権性の伝統を重んじる社会では有害とされてしまうのです。考え方を変える必要がありますが、まだまだ道のりは長いですね」と“現実”を語った。
そんな中、劇中で描かれるフーリアと彼女の母サブリナはともにダンサーであり、男性と暮らさず、ヴェールも被らず、喫煙もするという、自由な女性として映し出される。
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そのことについて「私にとって個人の自由とは、人生を満喫し、自分自身を表現し、様々な芸術の道を突き詰めることです。アルジェリアでは、伝統や父権性がまだ根強いから、女性が自由でいるのは難しい。結婚式で踊ることが恥ずべき行為と思う人がいても、映画に登場するサブリナは、才能があり、自分の力で堂々と生き、教養ある女性として描かれています」と言及する。
クラシックバレエの枠組の中にいたフーリア。しかし彼女は、命に関わるような事故で言葉を失い、傷つきながらも手話を使う女性たちと交流し、「体を解放し、新しい身体言語に身を委ねる」ことによって自分の殻を破り、本当の自分を手に入れる。
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ダンスと手話は、権力者には理解できない反逆者の言葉、秘密の言語だとも監督は考える。「フーリアは、こうした女性たちだけにしか理解できないような振り付けのダンスを完成させます。強い絆と秘密の言葉で、現代社会を批判すべく団結するのです」と、傷つきながらも自由を求めて抗いつづける女性たちにエールを送った。
『裸足になって』は7月21日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。