昨年の第75回カンヌ国際映画祭にてグランプリを獲得、第95回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた『CLOSE/クロース』から、色鮮やかな花畑を駆けるレオとレミが、2人だけの世界に没頭する冒頭シーンが解禁された。
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本作の主人公は、花き農家の息子で活発なレオと少し引っ込み思案だが音楽の才能豊かな幼なじみのレミ。性格は違えど、24時間365日ともに過ごしてきた2人は兄弟のような関係だ。13歳になり中学校に入学すると、親密過ぎる関係をクラスメイトに指摘され、周囲を気にしたレオはレミと距離を置くようになっていく。
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今回解禁となった映像は、そんな2人が仲違いをする以前、お互いを唯一無二の存在と認め、2人だけの世界にいた頃のこと。
画面いっぱいに広がる、鮮やかなピンク、白、黄色、赤のダリアの花畑に目を奪われるこの冒頭のシーンは、ルーカス・ドン監督の出身地ベルギーにあるウェッテレンと画家ゴッホの生誕の地で有名なオランダのズンデルトで撮影が行われ、監督自身が生まれ育った村にあった花畑がアイディアの基になっている。
心地よい春の日差しのもと、互いを気にかけながら眩い笑顔を振りまき駆ける2人の姿からは生命力や希望が感じられる1シーン。
だが、この美しい時間は長くは続かない。夏、秋、冬と季節が巡るように、2人の環境も変化し、映画冒頭に色鮮やかだった風景も次第に暗くなっていく。美的手段として“色彩”を取り入れたかったと監督が語るほど、本作では色にこだわりを見せており、映画前半と後半での色彩のコントラストは見どころの1つとなっている。
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さらに監督は「子供の悲しみの過程を伝えるために、季節の色彩のコントラストを強調したかったのです。暗かった冬が過ぎると、花が再び植えられ、色が戻り、希望と生命が続いていくことを告げてくれます」と話し、映画に季節を取り入れることで、言葉ではうまく伝えることのできないレオとレミの心の機微を描いている。
そんなルーカス・ドン監督が生み出した繊細な物語を一足先に鑑賞した『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督は、「大切なものが奪われていく。それは体の一部を剥がされるような痛みに近い。少年の日の喪失ーその痛切を描いた、永遠の記憶に残る一篇」とレオとレミが思春期への旅で出会う変化と悲しい痛みに共感を寄せ、映画パーソナリティの伊藤さとりは「早くも本年度No.1になってしまった大傑作」とコメント。
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映画文筆家の児玉美月は、「どうしてぼくたちは、ただただ一緒にいるだけではいられないのだろう。ふたりきりの秘密の花園を、ずっと君と駆けていたかった」と、この冒頭のシーンに思いを馳せ、さらに映画ライターのよしひろまさみちは「是枝裕和監督の『怪物』でも描かれた少年時代の友愛とセクシュアリティのゆらぎ。そこから一歩踏み込んで、子どもの感情をあからさまに爆発させた。ステップ・バイ・ステップが通用しない少年時代の、美しくも残酷な1ページ」と今年のカンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞した是枝裕和監督の『怪物』にも言及した。
『CLOSE/クロース』は7月14日(金)より全国にて公開。