ヌーヴェル・ヴァーグの象徴であるゴダールが絶賛し、トリュフォーは嫉妬したという逸話をもつジャック・ロジエ監督の特集上映『みんなのジャック・ロジエ』を、7月29日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開することが決定した。
パリの街並み、地中海の陽光、きらめく砂浜、ロマンスに夢中の少女、うつろいゆく青春を謳歌しようとする男たち…。輝く季節を軽やかに大胆に切り取るジャック・ロジエ。その全貌を捉えようにも作品に触れる機会が限られていたロジエ作品だが、近年フランスではギヨーム・ブラック監督(『みんなのヴァカンス』『やさしい人』)など熱狂的に支持する若手監督も現れている。

今回の特集上映では、ジャック・ロジエ監督の長篇劇映画全5作品のうちデジタル・レストアされた4作品【パリとコルシカ島へ夏のヴァカンス『アデュー・フィリピーヌ』、カリブ海へ冒険ヴァカンス『トルテュ島の遭難者たち』、大西洋の島へ冬の小さなヴァカンス『メーヌ・オセアン』、ヴァカンスから演劇へ『フィフィ・マルタンガル』】。

そして短篇2作品【ゴダール『軽蔑』の撮影を取材した2作品『パパラッツィ』『バルドー/ゴダール』】を上映。長篇『トルテュ島の遭難者たち』と『フィフィ・マルタンガル』は劇場初公開となる。
公開決定に際し、ジャック・ロジエ監督の『オルエットの方へ』『メーヌ・オセアン』に出演したフランスの名優ベルナール・メネズよりメッセージが到着している。
■フランスの名優ベルナール・メネズがジャック・ロジエにコメント
私は、ジャック・ロジエ監督の『メーヌ・オセアン』で、ヴヴェイ映画祭の最優秀演技賞を受賞しました。映画祭が行われているヴヴェイは、チャーリー・チャップリンが最後の二十数年間に住んでいた場所で、この賞はチャーリー・チャップリン・カンヌ・ドールと呼ばれています。『メーヌ・オセアン』は、私にとっては間違いなく、デビューから出演した中で最高の作品です。日本の観客の皆さんに、ジャック・ロジエ監督の作品を楽しんで頂きたいと思います。

特集上映『みんなのジャック・ロジエ』作品詳細
【長篇作品】
■『アデュー・フィリピーヌ』(2Kレストア)

1960年パリ。アルジェリア戦争のなか兵役を数か月後に控えた青年ミシェルは、勤務先のテレビ局でリリアーヌとジュリエットという仲の良い2人の娘と知り合う。2人は次第にミシェルに惹かれていくが、彼はどちらとも上手くやろうとする。そんな中、仕事でミスをしたミシェルは、兵役前にヴァカンスを楽しもうとテレビ局を辞め、2人に告げぬままコルシカ島へ旅立つ。
■『トルテュ島の遭難者たち』(4Kレストア) ★劇場初公開★

パリの旅行代理店に勤めるボナヴァンチュールと同僚の「太っちょノノ」は、ロビンソン・クルーソの冒険を追体験させる無人島ヴァカンスツアーを企画する。早速、彼らはツアーの候補地に向かうが、空港で「太っちょノノ」が逃げ出し、代わりに弟の「プティ・ノノ」がボナヴァンチュールに同行することに。現地で2人は、パリから到着した最初のツアー客を出迎え冒険をはじめるが、誰も2人の言うことを聞かない。
■『メーヌ・オセアン』(4Kレストア)

ブラジル人ダンサーのデジャニラは、パリ発の特別列車「メーヌ・オセアン号」に飛び乗るが、検札係に罰金を命じられる。フランス語が分からない彼女だが、たまたま通りがかった弁護士の女性に助けられ、2人は仲良くなる。翌日、弁護士に誘われ漁師の裁判に立ち会ったデジャニラは、その漁師が住む大西洋の島で週末を過ごすことにするが、そこに検札係もやって来て…。
■『フィフィ・マルタンガル』(デジタル・レストア) ★劇場初公開★

ブールヴァール劇「イースターエッグ」はパリで大ヒット中。この低俗な自作が権威あるモリエール賞を受賞したと知った劇作家は、これを何かの陰謀だと思い込み、上演中の戯曲を改変して「敵」に報復しよう企む。
【短篇作品】
■『バルドー/ゴダール』(2Kレストア)
■『パパラッツィ』(2Kレストア)

1963年5月、ゴダール『軽蔑』の後半部分を占めるカプリ島での撮影現場を訪れたロジエ監督は、そこで撮影したフッテージを基に2本の短篇を製作する。『パパラッツィ』では、ブリジット・バルドーを一目見ようと集まる群衆や、スクープ写真を狙うパパラッツィに焦点をあて、『軽蔑』を外側から捉えようとする。『バルドー/ゴダール』では、作品の内側からゴダールの撮影美学に迫りながら、ロジエの作家性をも浮かび上がらせている。

特集上映『みんなのジャック・ロジエ』は7月29日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開。