ふり返りと新年の抱負を立てていく年末年始。2022年、新たな年を迎えるにあたり、<音楽>と<主人公の成長>を描いた音楽映画をピックアップ。
Siaが主人公に自身を投影した初監督作『ライフ・ウィズ・ミュージック』(2月25日公開)
まず1作品目は、シンガーソングライターSiaが初監督を務め、オリジナル楽曲でカラフルに彩るポップ・ミュージック・ムービー『ライフ・ウィズ・ミュージック』。
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主人公は、Sia自身を投影した、アルコール依存症のリハビリテーションプログラムを受け、孤独に生きるズー。祖母の急死により、長らく会っていなかった自閉症の妹ミュージックと暮らし始めるが、その生活に戸惑うズー。そこにアパートの隣人エボが優しく手を差し伸べ、次第にズー自身も、孤独や弱さと向き合い少しずつ変わろうとしていく。
ズーを演じるのは、『あの頃ペニー・レインと』のケイト・ハドソン。周囲の人々との関わりの中で“愛する”ことを知り、自身の存在価値を見出しながら成長する姿を見せる。また、Siaにとっての“救い”である音楽そのものをイメージした、イマジネーション豊かな自閉症の妹ミュージックは、Siaの「シャンデリア」のMVで圧巻のダンスパフォーマンスを披露したマディ・ジーグラー。隣人・エボは、トニー賞最優秀ミュージカル俳優賞に輝いたレスリー・オドム・Jr.が演じている。
実力派キャストたちが物語の中披露する音楽シーンは、ミュージックの内面世界を映し出す表現手法として使われており、新体感のポップ・ミュージック・ムービーを象徴する見どころのシーンとなっている。
プレイリスト・ムービー『WAVES/ウェイブス』(’20)
『ムーンライト』や『レディ・バード』で知られるスタジオ「A24」が手掛けた、傷ついた若者たちが新たな一歩を踏み出すまでを鮮烈に描く、希望の物語『WAVES/ウェイブス』。
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成績優秀なレスリング部のエリート選手で、美しい恋人アレクシスもいる高校生・タイラーは、何不自由のない生活を送っていたが、ある日、肩を負傷したことから、運命が狂いだし、タイラーと家族の運命を変える悲劇が起きる。1年後、悲劇でふさぎ込む妹エミリーの前に、事情を知りながらも好意を寄せる不器用で優しい青年ルークが現れ、恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた――。
幸福な日常を失った兄妹の物語を軸として、人と人の繋がりの中で、破滅と再生を鮮やかな色彩と光を用いた映像表現、登場人物の感情を映し出す革新的な音楽の表現がなされ、本作は、まさしく“ミュージカルを超えたプレイリスト・ムービー”そのもの。
キーラ・ナイトレイ主演『はじまりのうた』(’15)
キーラ・ナイトレイが主演し、ジョン・カーニー監督がN.Y.の街角を舞台に描く、音楽が寄り添う『はじまりのうた』。ミュージシャンの彼デイヴに裏切られ、失意の中、ライブハウスで歌う、キーラ演じる主人公グレタ。偶然居合わせた落ちこぼれの音楽プロデューサー、ダンとの出会いから、思いがけぬデビューの話へと発展するが、録音スタジオは、N.Y.の街角。路地裏、ビルの屋上、地下鉄のホームという思いも寄らない場所でゲリラレコーディングは実施されるが、この無謀な企画が、小さな奇跡を起こし始める…。
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キーラが、ギターを演奏しながら披露する歌声はもちろん、人気ロックバンド「Maroon 5」のアダム・レヴィーンがデイブ役で出演し、美声を披露。静寂も、騒音も、あらゆる音を楽器にした前代未聞のレコーディングで生まれた楽曲たち、音楽の力で本当の幸せを見つけた主人公の姿に注目だ。
少年の夢と恋、そして友情…『シング・ストリート 未来へのうた』(’16)
『はじまりのうた』と同監督、カーニー監督が手掛ける、80年代のアイルランド・ダブリンを舞台にした、半自伝的な青春ドラマ『シング・ストリート 未来へのうた』。都会の音楽への憧れを抱いていた14歳の少年は、一目ぼれした少女を振り向かせるために、バンド結成。PVを制作し、憧れのロンドンを目指して音楽活動に没頭する少年の夢と恋、そして友情を映し出す。
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劇中で登場する「デュラン・デュラン」、「ザ・クラッシュ」、「ザ・ジャム」など、80年代という時代を表す数々のヒット曲はもちろん、アダム・レヴィーンが担当した主題歌も必聴。