第1話のテーマは、いわゆる一気飲みの強要などの「アルハラ」だ。浅香航大演じる主人公の青田は、高校・大学をラグビー部に捧げたいかにもなthe体育会系上がりで、広告代理店の営業部では持ち前のガッツと根性で営業成績ナンバーワンのエース社員だ。さらには、結婚相手はナショナルクライアントの社長の娘で、実績・人脈双方の観点から見ても将来有望、出世コース間違いなしだろう。
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ただし、その営業成績の裏には過剰なまでの接待、いわゆる“飲みニケーション”が潜む。“自分が出来ることは他人も当然出来る”とお得意の根性論をかざし、部下にシャンパンの一気飲みを強要するが、本人はそれを悪びれることもなく「アルトレ」(アルコールトレーニング)と自称する。
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彼が言う「気合で仕事を獲った」とは「とにかく使えるものはなんでも使う」の意であり、彼自身は「会社のために飲んでいる」と頑なだ。クライアントが自社の女性部下を気に入れば、全くお酒を飲めないという彼女にも無理矢理飲酒するよう煽る。「アルハラ」だけでなく「パワハラ」に「セクハラ」まで加わり、ありとあらゆるハラスメントが凝縮された様子が描かれる。それがなぜだか「せっかくのお酒の場だから」「飲んでいるんだからちょっとくらい良いだろう」という気の緩みもあってか、何なら断った側が「場を盛り下げた」として白い目で見られたりするのだから、本当に節操のない“想像力を欠いた”「飲み会」は危険だ。
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ただ、本作内で青田の悲しき新入社員時代の回想シーンが差し込まれる。まさに、いま青田が部下に強要していることと同じ洗礼を彼自身も受けてきたのだ。悪しき習慣こそ伝承され、再生産される。青田は加害者なだけでなく被害者でもあったのだ。これが「ハラスメント」や組織に蔓延る暗黙のルールの悲しいところであり、それらが「過去の産物」とはならない所以だ。新入社員の辛さがわかるはずの青田が、「その分、自分だけは部下には同じ思いをさせない」「アルハラするような上司にはなりたくない」とはならずに、悲しいかな、「自分もこの辛さを乗り越えられたんだから、お前ももっと出来るはずだ」と後輩に同じ通過儀礼を課すのだ。どうして人はこうも同じ轍を踏んでしまうのか。
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浅香さんと言えば、これまでどちらかと言うと“陰の要素があるキャラクター”を演じることが多かったように思う。『あなたの番です』(日本テレビ系)での刑事・神谷将人役のような合理的でドライな役どころや、映画『チア男子!!』での理屈っぽく友達もいない溝口渉役などが筆頭だ。
最近では『コントが始まる』(日本テレビ系)で、マクベスメンバーの高校時代の同級生でバスケ部エース、成績優秀なスーパースター、かつ現在は若手起業家という眩しいまでの好青年役を好演した。だが、それにしても本作で観られるここまで“陽なキャラクター”に迷いなく振り切った浅香さんの姿は珍しいのではないだろうか。
青田の掲げる「正義」が周囲を傷つけ、最終的に自分をも容赦なく傷つけていく…あまりに苦しく悲惨な“特大ブーメラン”を反面教師にしたいと、改めてそう思わされる。