Netflix観る作品が多すぎてどれを観たらよいか…と迷っている方にオススメしたい今イチ推しのドラマが「クイーンズ・ギャンビット」。英語圏ではTOP10にもランクインし、批評サイトのロッテントマトでは100%を獲得しており、各メディアでも高評価の連続です。
女の子がチェスなんて…と言われた時代に誕生したチェスの天才少女
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1983年に刊行された同名小説を映像化した本作の舞台は1960年代のアメリカはケンタッキー州。交通事故で母親を失い、カトリック系の孤児院に引き取られた主人公のエリザベス(ベス)・ハーモン(アニャ・テイラー=ジョイ)は、そこで用務員シャイベル(ビル・キャンプ)からチェスを教えてもらい才能を開花させて行きます。
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当時はチェスは男性が嗜むものとされ、最初は教える気がさらさらなかったシャイベルも彼女の天才的な理解力の速さと賢さに、次第に真剣にチェスを教え始めます。ただの好奇心だけではなく、母を失った心の傷を忘れようとするかのようにチェスに没っとうするベス。
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驚くべきは、孤児であり心に傷を負った少女たちに、後にケンタッキー州では違法となる精神安定剤を飲ませるという時代背景もあり、ベスは9歳にして薬物中毒への道も同時に歩んでしまいます。薬を飲むとゾーンに入り、チェスに対しての頭も冴えていくベスの姿は痛々しくもあり、同時にチェスに没頭することで生きる意味が湧くという矛盾も孕んでいて…。生きる意味があることで、鬱屈した人生のどん底から生きながらえた孤児の少女がどのようにしてチェス界で成り上がっていくのか、目が離せません。
1960年代の可愛い緑色のファッションに隠された意味
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ベスが大人になるにつれて特に目を引くのは、彼女の子どもから大人への表情や振る舞いの成長と共に着こなすようになるオシャレな1960年代ファッション。似たようなワンピースやブラウスがどこかに売ってないかついつい探したくなってしまいます。Netflixは特設サイト「The Queen and the Clown」(英語のみ)でいくつかのベスのファッションについて、ただオシャレなだけじゃなく、なぜその服を選んだのか解説しています。
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例えば、ベスが交通事故に遭った時に来ていた母が作ってくれた刺しゅう入りのペールグリーンのワンピースは「ママはあなたのことを愛している」という名前とのこと。このワンピース自体は、家庭的な可愛さはあるものの、後半に出てくる服に比べたらそこまでファッショナブルとは言えません。ただ、劇中でベスと彼女の母との関係を間接的にファッションを通して描く重要な役割を果たしています。
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ベスは大事な試合で緑色のワンピースを着用しており、特に、終盤で着用している薄い緑のワンピースの名前は「エンドゲームドレス」。「ママはあなたのことを愛している」で始まり、「エンドゲームドレス」で物語を終える時、ベスが抱えていた母との思い出と心の傷はどうなったのかも見逃せないポイントです。
男社会で活躍する女性が持つのは強さだけではない
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ベスが「エンドゲームドレス」で物語を終えるまで、薬物中毒以外にも様々な生きる上での葛藤が描かれます。これまでは成り上がる女性は勝ち気で、どんな困難にもタフに立ち向かうスーパーウーマンとして描かれることも多かったのですが本作はそうではありません。日本では将棋や囲碁の方が一般的で、日本語では「女流棋士」と敢えて表現されるほど、もともとは男性中心の文化だったということが色濃く残っていますが、チェスも同様に、1960年当時のアメリカでは女性は家庭に入るもので、チェスなんて男性の嗜み、ましてやチェスの大会に出るなんてもっての外という時代。
「女がチェスなんて…」と言われ、男性プレイヤーを圧倒し頭角を表せば「高慢だ」と言われ、世の中が決めた「女性としての生き方」から外れているという視線で見られてしまうベスを通して、現代の女性が抱えている苦悩を思い出さずにはいられません。
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確かにベスはチェスの才能だけ言えばスーパーウーマンですが、同時に一人の人間としての脆さも表現しています。失敗すれば、負ければ「やっぱり女だからだ」と言われるような時代において、女性のパイオニアとして気づかぬ内に背負ってしまうプレッシャーと、トラウマとなった母との記憶…。よくある天才が成り上がるストーリーとも、女性活躍ストーリーとも一線を画す「脆さ」と向き合う新しい女性の主人公は、「脆さ」は「弱さ」ではないことを描き、女性が持つ見えないプレッシャーから解放してくれるように感じます。
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チェスの仕組みを知らなくても、一人の女性の生きざまとしてのストーリーが見応えたっぷりな「クイーンズ・ギャンビット」。ぜひ次の視聴作品に迷ってる方はご覧ください。