貴志は、患者の話に耳を傾けてくれると評判の精神科医だが、6年前に亡くした妻・薫のことを想ってはむせび泣き、薬で精神を安定させる日々を過ごしていた。患者としてやってきた女・綾子は、治療関係を超えて貴志と気持ちが通じ合い、やがて貴志に寄り添うようになる。しかし綾子は、貴志の亡き薫への断ち切れない思いや薫との子ども・祐樹の存在を知るや猛烈な嫉妬心にさいなまれ、独占欲がふくらむ。そして、前妻の弟・茂に近づき…。

本作は、亡き妻への思いを捨てきれない男と、その男に恋をする女、嫉妬と復讐と救済の劇を描く物語。これまでも強烈な自我を持つ女性を軸に、狂気ともいえる愛を描いてきた万田邦敏監督が、『UNLOVED』『接吻』に続き、共同脚本・万田珠実と3度目のタッグを組んだ。
キャストには、『UNLOVED』『接吻』でキーパーソンを演じた仲村さんが、現実と幻想の区別がつかなくなる精神科医・貴志役。貴志からの愛を切望する綾子役は、監督としても活動する杉野さんが演じ、本作の発案・プロデュースも務めている。また、亡くなった姉に恋焦がれる内山茂役を斎藤さん。6年前に亡くなった貴志の妻の亡霊を、中村さんが強く儚く演じる。

ほかにも、貴志の息子・祐樹役は、オーディションで選ばれた藤原大祐が演じ、映画デビュー。片桐はいり、ベンガル、森口瑤子らベテランが脇を固める。
仲村さんは「『愛のまなざしを』の撮影現場は過去の自分が出演した万田邦敏監督の作品と比べると『答えなど最初からないのです』と言われ、『迷宮を駆け抜けたような』日々でした。過去の万田組の現場の雰囲気と共通していたのは涼しさより少し冷たさに近いような、ひんやりとした緊張感、でしょうか。ただそれも、過去の現場にあった張りつめていたものが、時に歪んだり捻じれたりするような新鮮な瞬間が何度もありました」と今回の撮影をふり返っている。
『愛のまなざしを』は2021年公開予定。