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前作『イット・カムズ・アット・ナイト』に続いて本作で通算3度目のタッグとなり、お互いを知り尽くしたトレイ監督とドリューは、本作のビジュアルの構想について脚本初期の段階から入念に打合せ、登場人物たちの心情を映像の変化で表現することに心血を注いだという。
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初タッグを組んだトレイ監督のデビュー作『クリシャ』で、ドリューは『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞撮影賞を受賞したリヌス・サンドグレン、『ムーンライト』のジェームズ・ラクストン、『沈黙 -サイレンス-』のロドリゴ・プリエトに並んで、ヴァラエティ誌による「必見の10人の撮影監督」に選出。さらに、若い世代から圧倒的な支持を得ている「A24」制作のゼンデイヤ主演ドラマ「ユーフォリア/EUPHORIA」でも撮影監督を担当し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。
ドリュー・ダニエルズ「奇跡のような1シーン」の舞台裏明かす
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「美しいフロリダの光を映画に取り込む為に、なるだけ自然光に拘って撮影を進めました。フロリダの太陽は日差しも強く、時折嵐にも見舞われます。撮影は正にその日の天気次第で、良い方向に働くこともあれば、そうでない時もありました。緻密に計画していても、雨や嵐、俳優、場所による制限など、外的要因すべてが撮影に影響を与えます。ですので、臨機応変に計画を変え、ジャズセッションのような状況に応じた撮影スタイルを進めました」とドリュー。
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そして「そのお陰で生まれた奇跡のような1シーンもあります。2台のカメラで撮影したタイラーとアレクシスがビーチで親密な時間を過ごすシーンです」と告白、「実はあのシーンは、一日の終わりに、『時間があれば撮ろう』というスタンスのシーンの一つだったのです」。
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夕方の薄暗い中、景色が黄金色に輝く黄昏時を撮ろうとしたとき、それは訪れた。「日が落ちかけていて、光が消えてなくなる寸前だったんです。ですがその直後、日が完全に落ちる直前の少し青みがかった空にピンク色が混じり、稲妻の嵐が離れたところで光っている瞬間が訪れ、その最高に美しい一瞬をカメラに収めることができたんです。嵐と雷が迫る中で、水の中にいるのがギリギリ危険ではない最後の瞬間だったんだけど、全員の力と素敵な偶然によって魔法のようなシーンを撮ることができました」。
シュルツ監督がカメラやアスペクト比にこだわった理由は?
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「ドリューと僕が目指したのは、タイラーやエミリーのありのままの姿を映し出している、主観的で表現主義的な没入型の映画を作ることでした」とシュルツ監督。「例えばオープニングシーンでは、タイラーとアレクシスの間で360度カメラを回転させているんだけど、あれはタイラーの感情、2人の関係、10代の恋を表しています。自由で美しく、少しだけ恐怖もある。タイラーとアレクシスは、思い切り愛し合っていて、思い切りケンカもする。若くて、自由で、ワイルドで、美しい2人だから、生の感情や恋心を表現するには、カメラを回すしかないと思ったのです」。
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また、「360度カメラを若い恋のモチーフとして、(妹の)エミリーが旅に出るシーンで再び用いました。アスペクト比も登場人物の心情を感じてもらうには効果的だったと思います。映画の冒頭はワイドレンズを用いて1.85:1にし、タイラーの充実した忙しない世界をたくさんの動きを入れて撮りました」。その後、タイラーの世界が崩れていくにつれ、その心情を表すかのように、アスペクト比も変わる。
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「悲劇が起きた直後に1.33:1にしたのは、閉塞感が増しますし、顔をアップでとらえるのに美しい比率だから。兄から妹にバトンが渡る瞬間には適していました。対象がエミリーに切り替わってからも、彼女はまだ深い悲しみに浸っていて、周囲と距離を置いているから、しばらく1.33:1を保ちフォーカスを浅くしています。エミリーが心を開き、恋をしようと決めた瞬間、彼女の感情に合わせて2.66:1に戻すんです。そして最後の3分の1で1.85:1に戻し、エミリーの傷は次第に癒され、周りの人々との絆も強まっていく」と監督。
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監督や撮影スタッフ達の徹底したこだわりと、フロリダの天候から生まれた奇跡の一瞬は、日本版ポスターのビジュアルにも採用された本作の美しさを象徴するような場面。そして、登場人物の心に寄り添って変化していく画面は、監督が語るように登場人物の頭の中に入ったような圧倒的な没入感を観客に与える。
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『WAVES/ウェイブス』は7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。