トラウマ・ホラー『Midsommar』
超常現象もの、モンスターもの、殺人鬼もの等々、ホラーにも色々種類があるが、本作『Midsommar』はトラウマ・ホラーとでも名付けるか。とにかく見ている側は、緊張と不安のあまり自分の精神状態がヤバくなるのではないかという究極の恐怖を感じる脳幹奇襲型(!?)ホラー映画である。
本作の監督は、『ヘレディタリー/継承』の仕掛け人アリ・アスター監督。アスター監督の提供する恐怖は、「明かりを消すのが怖い」とか「ベッドの下に呪われた人形が隠れているのではないか」といった恐怖とはまったく異なる。監督の崇拝者たちは『ミッドソマー』の美しくもおぞましく不快な描写を賛美し、反アスター派は作品の「グロテスク」さと「行き過ぎ」な性・暴力描写を糾弾する。
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アスター流恐怖の演出は、異常に不快なシーンをこれでもかというほど見せつけ聞かせ、見ている側は脳みそが気持ち悪くなる状態にまで追い込まれる異常な怖さだ。ソーシャル・メディアでは、「美しく強烈なホラー」、「これまでにない新しい恐怖体験が出来る!」など、怖いもの見たさをそそるコメントが目につく。
『Midsommar』の予告編は、一見すると美しく大して怖いシーンもなさそうな映画に見せている。だが2時間45分の『Midsommar』体験では脳みそに恐怖をねじ込まれるという凄い体験をさせられる。そしてこの「脳みそ拷問」が快感だというホラー・ファンが多いのである。
ともすると数日で忘れてしまうような作品が溢れている昨今のハリウッド映画界で、アスター監督の作品は異彩を放っている。刺激的に不快な同監督の持ち味を、「興味深い」と受け取るか「不快」と感じるかで、『ミッドソマー』への意見は180度変わってくる。だが得てして、周囲の状況に敏感で繊細な方や精神的に不安定な気分の時は、この映画を観に行かない方が身のためである…と言うと、かえって怖いもの見たさで劇場に押しかけるホラーファンが目に見えるようだが。劇場版では物足りなくアスター監督の「不快の美」にもっとドップリ浸かりたい方は、4時間版のディレクター・カットがブルーレイで公開予定。
10月9日更新:邦題『ミッドサマー』として2020年2月に日本公開決定。
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殺人ピエロ再び現る『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
2017年に大ヒットしたスティーヴン・キングのベストセラー小説を基にしたホラー作品、待望の完結編。
続編ではグッと豪華になった出演陣が話題となっている。もちろんペニーワイズ役は前作同様ビル・スカルスガルドだが、赤毛の少女ビヴァリーの大人役をアカデミー賞主演女優賞候補経験者ジェシカ・チャステインが演じている。クールなエージェントのような役柄が多いいつものジェシカからは想像できない選択だ。
そして弟をペニーワイズに殺された少年ビルの大人役は、映画『X-MEN』シリーズのプロフェッサーX役でお馴染みのジェームズ・マカヴォイ。また、口の悪いリッチー少年の大人役を、人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の人気者のビル・ヘイダーが演じている。ソーシャルメディアでは、心を動かす彼の熱演が話題になっている。
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2作目は、恐ろしい連続子ども失踪事件から何年もの年月が経過したあの田舎町から始まる。町の子どもたちが再び姿を消し出した。「負け組」の中では、マイクだけが恐ろしい思い出と共に町に残っていたがほかの仲間たちは、それぞれが大都市に引っ越し個々が成功した生活を営んでおり、恐ろしい思い出も風化しつつあった。
そんなある日、マイクから「負け組」メンバーそれぞれに「どうしても至急帰ってきてくれ」という電話が入る。スタンレー以外の5人が顔を合わせ楽しい思い出を語るうちに、恐ろしい殺人ピエロの影が見え隠れする。スタンレー欠席の理由が分かるとともに「負け組」とペニーワイズの最後の死闘が幕をあける。
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ネタバレを避けるために多くは語らないが、この作品で真の主人公は心理学の根幹に位置する子ども時代のトラウマだ。本作は、数あるキング作品の中で最も恐ろしく同時に奥の深い作品かもしれない。
スーパーマンが“悪”だったら?『ブライトバーン』
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の人気監督ジェームズ・ガンが製作にまわり、これまでジェームズ・ガン監督のチームでショートを製作していた新人監督デヴィッド・ヤロヴェスキーがメガホンを取り注目を集めたホラーサスペンス。
本作の脚本を手掛けたブライアン・ガンはジェームズ・ガンの兄弟でマーク・ガンは従兄弟。
スーパー・ヒーロー映画だらけのハリウッドで、本作はもしもスーパーマンが正義の味方でなく、悪の権化だったらどうなるかという新鮮な角度から攻めていく。
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カンザス州にあるブライトバーンという田舎町に住むトリーとカイル夫妻は、不妊治療を重ねても子どもができずに悩んでいた。そんなある夜、夫婦の農場に轟音が響き隕石が落下。その中にはかわいい男の赤ちゃんが入っていた。天の贈り物だと信じて赤ん坊をブランドンと名付け、我が子として育て始める夫婦。だが12歳の誕生日を境に優しく穏やかだったブランドンの性格が急変する。ブランドンを戒めようとした人たち、疑問を抱いた人々が次々に無残な死を遂げるという事件がおこる。愛する息子だがブランドンを疑わざるを得なくなっていた夫婦の身にも危険が迫る。そして地球にも。
マーベル・ヒーロー映画の監督として有名になったジェームズ・ガンが、ライバル社DCコミックの英雄スーパーマンをモチーフにしたアンチヒーローものを製作したところが興味深い。「伝説の要素が備わった興味深いストーリー」「怖くて残酷で新鮮なアイデアの映画!」と評価する映画ファンが目立った。
エンド・クレジットを観終わってから劇場を出ることをオススメする。
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『シャイニング』の30年後が舞台『ドクター・スリープ』
2013年の出版と同時にニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーとなったスティーヴン・キングのホラー小説の映画化。巨匠スタンリー・キューブリック監督により映画化された『シャイニング』の続編。
舞台となるのはシャイニングから30年以上が経過した現代。ダニーは幼少期にルックアウト・ホテルで体験した恐ろしい経験からトラウマに苦しみ続け、大人になってからもアルコール依存に走り、定職にもつけない状態だった。しかし、地元のホスピスで自分の特殊能力が患者の穏やかな最期を手助けできることを知って献身的に働くようになる。やがて自分と同じ能力を持つ少女に出会い心理的な強い絆で結ばれるダニー。だが、少女との出会いが過ぎ去ったはずの恐怖を呼び戻し、彼らのシャイニングを付け狙う恐ろしい生き物の存在を呼び寄せることになるとは思いもよらないことだった。
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歴代に残る名作ホラーの続編であることや、主演にユアン・マクレガーが起用されたことなどから前評判の高い作品。ユアンが演じるのは『シャイニング』では幼かったダニーが成長した姿だ。
全米でもまだ未公開のため一般映画ファンの反応は未知だが、本来の全米公開が来年の1月24日だったところを、配給会社の米ワーナーブラザーズ側で、「映画の出来がかなり良い!」ということで、全米公開日が今年の11月8日に繰り上げられた。(text: Akemi Kozu Tosto/神津トスト明美)
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