「確かに自分の作品ではあるけど、物語自体にぐっときて。台本を読んでいたときの何倍も、何十倍も感動しました。ご覧になった方々も、“片寄さんが声を担当しているのを忘れて見ていました”と言ってくださることが多くて。あえて声色を変えるでもなく、素に近い声で演じているのに。それって、作品の力ですよね」。
港のロマンティックな台詞「ずる過ぎる」
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参加した片寄涼太すら一観客として魅了する『きみと、波にのれたら』は、消防士の青年・港とサーフィンを愛する大学生・ひな子のラブストーリー。ある出来事をきっかけに知り合い、瞬く間に恋に落ちた2人は、やがて“共に過ごす永遠”を夢見るようになる。
「湯浅(政明)監督がいかにロマンティストかってことですよね(笑)」。やや茶化した口調で敬意を示すのは、映画の冒頭から中盤まで、恋人たちのひたすら甘い時間が描かれるからだ。自然体で純粋な港は、愛するひな子に向けてロマンティックな言葉を口にする。演じる片寄さんも、アフレコではロマンティックな言葉を何度も放った。
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「僕は照れないAB型なので(笑)。どの台詞も楽しんで言えました。でも、あれはちょっとずる過ぎると思ったな。港の難しい名字に戸惑うひな子に対し、“自分の名字になったらどうすんだよ”って言うところ。あの一言には、“男”が一番出ている気がする。ほかの言葉は子どもっぽかったりもするけど、あれは…ねえ(笑)」。
ただし、港のストレートな言動の裏には、死と決して無縁ではない消防士の日常があるからかもしれない。こう指摘すると、「確かに。それはあるかも」。実際、港の人生は突然の終わりを迎え、いつまでも一緒にいられると信じていた恋人たちの願いを引き裂く。
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「そもそも作品自体、命や人生といった深い部分に触れられていて。大事な人には大事なことを伝えておかなきゃいけない。そんなことを気づかせてくれる内容にもなっていますから。僕自身、愛や感謝を照れずに伝えることが大事だと感じているし、意外と言えているかなと思っています。親にも、仲間にも。この仕事を始めてから…かな? そうなれたのは。17歳でデビューし、親と離れて暮らすようになったのが大きいかもしれない」。
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