見たのは、イタリアのアリーチェ・ロルヴァケル監督新作『Happy As Lazzaro』(写真)。これがとても素晴らしかった!本作が長編3本目で、過去作も良いとは思ったけれど、今回は数段上のステージに上がった感がある。物語の意外性がポイントとなる作品であるだけに、あらすじを紹介するのが難しい。よくもこんな物語を思いつくものだと、アリーチェの才能に脱帽するばかりだ。
ヒロインの心の障害をひとつずつ丁寧に取り除いていくような繊細な演出は堂に行っており、家族との心理的距離の近さや遠さによってヒロインの性質が少しずつ変化していく様は説得力に富んでいる。主演女優も素晴らしい。これまた若手部門の「批評家週間」では格が違う。アイスランドの『Woman at War』と本作『Fugue』がこの部門では賞を競うことになるのは間違いない。たまたま両監督とも知り合いなので、両者が揃って秀作を仕上げてきた歓びは何物にも代えがたい。