<批評家週間/長編コンペ> 『Chris The Swiss』(スイス/アンジャ・コフメル) 『Diamantino』(ポルトガル/ガブリエル・アブランテス&ダニエル・シュミット) 『One Day』(ハンガリー/ゾフィア・シラギ) 『Fugue』(ポーランド/アグニェスカ・スモチンスカ) 『Woman At War』(アイスランド/ベネディクト・エルリングソン) 『Sauvage』(仏/カミーユ・ヴィダル=ナケ) 『Sir』(インド/ロヒナ・ゲラ)
批評家週間のコンペは7本。お馴染みの名前があったりして興奮します。
『Chris The Swiss』(スイス/アンジャ・コフメル) スイス人のアンジャ・コフメル監督による「アニメーション・ドキュメンタリー」(anima-doc)作品です。このジャンルは比較的新しい印象があり、もちろん『ペルセポリス』(07)や『戦場でワルツを』(08)といった世界的に有名な作品が存在していますが、これらに次ぐ作品が続々と見られているかというとそうでもない。創作には非凡な経験と才能が必要であろうと思われ、そうそう次々に出来るはずもないのでしょう。
それがここにきてイランの様々なタブーを描く『Tehran Taboo』(17)や、アンゴラ内戦を描く『Another Day of Life』(今年の「ある視点」部門で上映)など、社会派/ノンフィクション系のアニメーションが目に触れる機会が増えてきました。これは本当に嬉しいことで、必ずフォローしていきたいです。
『Chris The Swiss』は、92年のクロアチア戦争を背景にしています。スイス人のジャーナリストが戦争を取材中に死亡し、彼はアンジャ・コフメル監督が少女の頃に憧れていた従兄であった。年月が過ぎ、成長した監督は従兄の死の背景と真相を探ろうとする…。
『Woman At War』(アイスランド/ベネディクト・エルリングソン) なんと!2013年の東京国際映画祭のコンペに出品され、監督賞を受賞した『馬々と人間たち』のベネディクト・エルリングソン監督の新作です。『馬々と人間たち』は映画祭でも大好評で、その後日本での劇場公開も果たしました。『ゆれる人魚』のアグニェスカ・スモチンスカ監督についても上述したとおりで、日本で劇場公開実績のある監督がふたりも入っている「批評家週間」は史上初ではないでしょうか?
アイスランドの荒涼たる景色の中で繰り広げられる人間と馬の愛とセックスを描いた『馬々と人間たち』は文字通り我々の度肝を抜いたわけですが、5年振りとなる新作『Woman At War』はいかに?
『Sir』(インド/ロヒナ・ゲラ) インドのロヒナ・ゲラ監督は、脚本家の仕事をこなす一方、平等を目指すNGO活動にもコミットしている存在であるそうで、長編ドキュメンタリー作品『What’s Love Got To Do With It?』(13)ではインドの「仕組まれ婚」の風習を取り上げています。『Sir』が初のフィクション長編監督作品です。
ところで、予習ブログを書いている最中にも、いくつかカンヌからニュースが届きます。ひとつは、予習第2弾ブログで触れたクロージング作品の『The Man Who Killed Don Quixote』にまつわるトラブルで、プロデューサーのパウロ・ブランコが弁護士を通じて映画祭に上映中止を申し入れているとのこと。