9時からの上映は、今回のベルリンで最も楽しみにしていたアキ・カウリスマキ監督新作の『The Other Side of Wind』(写真)。長編作品は2011年の『ル・アーヴルの靴磨き』以来だから、6年ぶりになるのか。結構待ったことになるけど、この希代の才能と同時代を生きられている幸運を天に感謝したい気持ち。いちフレームだけ切り取っても誰の作品か間違いなく分かる映画作家が、古今東西でどのくらいいるだろうか? 小津か、あるいはジャズのセロニアス・モンクのような存在だと思う。
17時15分に上映に戻り、「パノラマ部門」で『Ghost in the Mountains』という中国の作品へ。Yang Heng監督の4本目の長編で、僕はそのうちの(今作を含め)3本を見ているのだけど、もう少し情報を仕入れたいと思ってググってみたら、前作『Late August』について3年前に書いた自分のブログがヒットする始末。んー、まだ日本に紹介されていなかったか。書いたことすら忘れていた自分の文章を読み返してみると、見事に本作にもあてはまる。手抜きで引用すると、「ワンシーン・ワンショットで淡々と綴っていくテンポがとても心地いい。ゆっくりとした長いパンショットで、フレームの外の設定を取り込んでいく手法も効果的で、説明を排除したアンチドラマチックな展開にも全く飽きることがない」。