マイク・マイヤーズといえば、米人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で大活躍していた1980年代から、映画『ウェインズ・ワールド』『オースティン・パワーズ』で私を大いに笑わせてくれた人。コメディアンとして知られていますが、脚本家でもプロデューサーでもあり、映画俳優でも才能豊かなエンターテイナーです。そんな彼がドキュメンタリーを撮ったということで、注目せずにはいられなかった私。笑いのツボを知り尽くしたマイクだけに、面白くないはずはない! ということで、本当に笑えたドキュメンタリー映画が登場。『スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-』です。主役は、アメリカのエンタメ界を陰で動かしてきた男、天才的プロデューサーのシェップ・ゴードン。1968年に偶然チェックインしたホテルにいたジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスらと仲良くなり、「マネージャーでもやってみれば?」程度のノリで彼らに紹介されたのが売れる前のアリス・クーパー。こちらもノリで、「じゃあマネージメントやって!」的な話から始まり、43年もの付き合いが続いているのです。「一緒にお金持ちになろう」「音楽をやるなら真剣にやろう」と本気(透明のビニールスーツで歌うなど)を次々に実行し、やがてアリスをスターダムにのし上げたシェップ。こんな調子で、ブロンディやルーサー・ヴァンドロス、ラクエル・ウェルチらのマネージメントも行い、彼らと共に人生を歩んでいる業界の伝説的超有名人なのです。70年代には映画界にも進出し、『デュエリスト/決闘者』『蜘蛛女のキス』『ベティ・ブルー』など映画もプロデュース。その後、デニーロとトライベッカ・グリルをオープンさせ、レストランビジネスでも大きな成功を収めています。“エンタメ界を陰で動かしてきた”なんて聞けば、かなり悪者っぽく響きますが、そんなことはありません。彼が凄いのは、先見の明や湧き出るようなアイディア、目を見張るような業績だけではなく、その仕事哲学。「仕事よりも人としての付き合いが大事」。この信念を貫き、どんな人も裏切ることなく、手のひらを返すこともせず、誠実に人と向き合い大切にしてきた結果が成功につながった人なのです。