映像作家出身の監督による映画の多くのサントラが魅力的であるのと同じく、本作においてもダニエル・ハートによるサウンドトラックは、夢を見ているような感覚にさせる劇中を美しく演出している。透明感と濁りを同時に感じさせるような映像に色を足すストリングスやピアノの響きは、「Sigur Ros」や「The Album Leaf」といったアーティストを彷彿とさせ、アンビエント的なシンセサイザーの旋律は、不思議さと不気味さを同時に感じさせるシーンを見事に彩っている。
ほかにも、電車の中でデルがキンバリーの手を引く印象的なシーンでかかるSharon Van Ettenの「Love More」のカバーや、パリのホテルで流れるノスタルジックな味わいのワルツ「Ma Patite Livellule」といったボーカルトラックも聞き応えがあり、音楽自体が強い存在感を発揮している曲ばかり。今後が期待できる新鋭によるサウンドトラックとして、ぜひおすすめしたい。
《Text:Toshihiro Horiai》