続けて、「フォーラム」部門の『Cinema: A Public Affair』というドイツの監督による作品へ。ロシアの映画美術館を巡る状況を追うドキュメンタリー。ペレストロイカ以降の自由化の流れの中で、89年にワルシャワに映画美術館が設立され、それはロシアにおけるアート映画の普及に多大な影響を与えた。しかしゼロ年代に入り、環境が徐々に悪化し、近年では政治の介入が一層目立つようになり、尊敬されていた館長のキュレーターも更迭され、表現の自由が危機に面している状況が描かれる。映画の力への賛歌であり、そして現状への悲痛な警鐘でもある。全くもって、他人事ではない。
「パノラマ」部門で、『My Name is Annemarie Schwarzenbach』というフランス映画。戦前に活動したアンヌマリー・シュワルゼンバッハというスイスの女性作家に焦点を当てた、ドキュメンタリー的フィクションドラマ(分かりづらいですね)かな。シュワルゼンバッハのポートレートを、複数の若い女優たちに演じさせることで、その複層的な人物像を描いてみようという、実験映画的要素も含む作品。