15kmもの危険なサバンナ、見渡す限りの大平原、険しい山岳地帯、でこぼこだらけの未舗装道路…。世界の子どもたちがそんな道なき道を、徒歩や、馬、あるいは車椅子で、学校まで向かう姿を追ったフランス発のドキュメンタリー映画『世界の果ての通学路』。先日、本作に出演しているケニアの兄妹が来日し、毎朝サバンナを駆け抜けて学校へと通っている13歳の少年ジャクソンが、日本の子どもたちに学校について語る映像が到着した。ケニアのサバンナを、危険なゾウを避けながら駆け抜けるジャクソン。360度見渡す限り誰もいないパタゴニア平原を、馬に乗って妹と共に通学するカルロス。モロッコの険しいアトラス山脈を越えて、女友達3人と寄宿学校を目指すザヒラ。幼い弟たちに車椅子を押されながら学校に向かう、足の不自由なインドのサミュエル。彼らはひたすら歩く、歩く。走る、走る。ただ、学校に通うために…。本作は、文字どおり“命懸け”で学校に通う世界各国の子どもたちの通学路に密着したドキュメンタリー。険しい道のりも何のその、互いに励まし合いながら学校へと向かう子どもたちの生き生きとした姿を描き、本国フランスでは、動員130万人を超える大ヒットを記録。アンリラングロワ賞2014「ドキュメンタリー賞」受賞に続き、第39回セザール賞2014にて「最優秀ドキュメンタリー賞」も獲得した。今回来日したケニアの学校に通うジャクソンとサロメは、家族で唯一文字が読める。家の仕事も手伝い、近所との折衝も担う兄ジャクソンは、小さいころから幼い妹を守りながらサバンナを毎日往復して学校に通っている。2人は、一家で教育を受ける初めての世代なのだ。また、親もそんな子どもたちを心配はしているが、通学に付き添ったりはしない。登校前にお祈りを捧げながら、子どもたちを信じて送り出している。そんな2人に、日本人のインタビュアーからは「日本の子どもたちは学校が嫌いな子が多い。どうしたらいいと思う?」という質問が相次いだ。それに対して、ジャクソンは「学校は“行って当たり前”のところではない」と断言する。「行くには理由があって、自分を満たすために行く、自分のためと刻み込んで行くべきだということを(日本の子どもたちに)伝えたい」と言う。学校とは「やることはいっぱいあって真剣にやらないといけないことだらけだと思う。未来がいいものになるなら苦じゃないと」と、身振り手振りを交えながら英語で自分の考えを発言。13歳とは思えない大人も顔負けのその姿には、思わずインタビュアーから「オバマのようだ」という感嘆の声も聞かれていたほどだ。「夢はパイロット」と劇中で語る彼は、すでに将来のビジョンと家族を支えていく責任をしっかりと持っている。妹のサロメも、女性は教育を受けにくい地域でありながら夢を実現するため、兄の背中を追いながら学校に通っている。「学校は明日のためにチャンスをつかむ場所」と話すジャクソン。夢を追いかけることの大切さを映画の中でも雄弁に語ってくれている。『世界の果ての通学路』はシネスイッチ銀座ほか全国にて公開中。