ハリウッドリメイクも決定し各映画祭で高い評価を得ている、福山雅治主演作『そして父になる』のように、子どもの“取り違え”をテーマにした『もうひとりの息子』。イスラエルとパレスチナという、歴史的・宗教的にも確執のある国同士での取り違えに加え、当事者の子どもたちがすでに18歳という微妙な年ごろであることも注目を集めている本作の、2人の“息子たち”に迫った。昨年の東京国際映画祭で、大ヒット作『最強のふたり』に続く審査員全員一致の「サクラ グランプリ」と、さらに「監督賞」をW受賞した本作。出生時に取り違えられた2人の息子は、ひとりはイスラエル、もうひとりはパレスチナ。18年前、湾岸戦争の混乱の中、出生時の病院で取り違えが起きていたのだ。その事実が明らかになったとき、2つの家族は、かつてない動揺と葛藤の渦中に巻き込まれる…。18年間、フランス系イスラエル人として暮らしてきたヨセフを演じたのは、『ぼくセザール 10歳半1m39cm』や『リトル・ランボーズ』など、子役時代から活躍するジュール・シトリュク。かつて、“ちょっぴり太め”で甘いものに目がない男の子・セザールを好演したジュールも、軍の兵役検査を受けたことで、これまでの人生が丸ごとひっくり返る衝撃の事実を突きつけられる、ミュージシャン志望のナイーブな青年へと成長した。また、パレスチナ側の取り違えられた息子・ヤシンを演じたのは、本作をきっかけにオファーが殺到中の、ベルギー出身の新鋭マハディ・ザハビ。取り違えが分かった後、共に育った兄から「弟でも何でもない」という言葉を突きつけられるが、屈託のない明るさで前向きに事実に向き合おうとする。最新作『A Most Wanted Man』(原題)ではハリウッドの演技派フィリップ・シーモア・ホフマンとの共演を果たしており、その演技力はもちろん、エキゾチックな美しさも必見だ。取り違えられた2人の息子は、いわば“子犬系”と“正統派美形”の、まったく正反対のタイプ。しかし、互いに自らのアイデンティティに悩み、葛藤し、運命を受け入れていこうとする姿は、母性本能をくすぐられずにはいられない。『もうひとりの息子』は10月19日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。