奥田瑛二監督が実の娘の安藤サクラとその夫の柄本佑を主演に据え、東日本大震災の被災地を故郷に持つ男女の姿を描いた『今日子と修一の場合』が10月5日(土)に公開。都内劇場で初回上映前に奥田監督、安藤さん、柄本さんらによる舞台挨拶が行われた。ある事件で服役し、出所後は故郷を離れ東京で工場勤務で働く修一と、家族のために体を売り、そのために故郷を追われることになった今日子。そんな2人にも2011年3月11日のあの瞬間は訪れ…。朝早くからの上映、あいにくの天気にもかかわらず客席は満席。大きな拍手が奥田監督、安藤さん、柄本さん、共演の和田聰宏、小篠恵奈、和音匠の6人を迎える。これが5本目の長編映画となる奥田監督だが、本作は「特に特に心配な作品」だそうで、サクラさん曰く「監督は見たことないくらい緊張している(笑)」とのこと。それでも満員の客席に監督、キャスト一同ホッとした様子だった。奥田監督は「普通、映画撮るには3年必要ですが、この映画は撮ろうと思ってから1か月後には撮影に入りました。準備しないまま、それでも撮るもの、そして心がそこにあった」と語った。父である奥田監督の『風の外側』で映画デビューを果たし、本作で再び父娘のタッグを組んだ安藤さんは「7年前の映画デビューのとき『次に監督の作品に出るときは自分が“戦力”になってからじゃないと』と思ってたんですが、こうしてまた出る機会があり、初めて初日の前日眠れませんっでした」と告白。通常の監督と主演女優というだけではない「特殊な間柄なのでつらい部分もある」と漏らしつつ、「2人で渋谷に衣裳を買いに行ったり、普段、俳優部にいるだけではできないことができた。当初は娘として自分が出るとは思わずに(奥田監督の姿を)見ていたので複雑な気持ちもあるんですが、いまはたくさんの方に観ていただきたいという切実な思いがあります」と胸の内を語る。“娘婿”の柄本さんも「ドキドキです」と初日を迎えての心境を語る。普段、“義父”と飲みに行くことも多く「陽気に踊ったりすることもあるんですが、現場ではそんな普段の姿は微塵もなく、どっしりと構えてスタッフ、キャストをまとめていました」と現場の様子を明かした。最後の挨拶でマイクを握った奥田監督は「(長編映画監督作は)5年ぶりなので感無量です」と感慨深げに語り、サクラさんが優しく父の背中に手をやる姿も見られ、会場は再び温かい拍手に包まれた。『今日子と修一の場合』は全国にて公開中。