昭和40年頃にわりとあったという信じられない現実に耳を疑うが、欧州でもなくはない話。私はふと、1988年のフランス映画『人生は長く静かな河(La vie est un long fleuve tranquille)』(エティエンヌ・シャティリエ監督)を思い出した。子どもを取り違えられた二つの家庭の対比は言うまでもなく、片や敬虔なクリスチャンでブルジョワ家庭、一方はアナーキーな労働者階級という階級のあるフランスらしい設定で分かりやすい。そこには深刻さや悲壮感はまるでなく、終始コメディタッチでストーリーは進み、日本では描くことのない子どもたちの狡猾さも可笑しく、当時大ヒットを記録した作品。フランスらしく、タイトルが物語を皮肉っている。