平日の昼の回へ行ったのに満員の立ち見。その前日に行った人も 私の翌日に行った人も言っていた。「立ち見だった」そりゃそうよ、と思う。素晴らしかったもの。大森立嗣監督と言えば私はこれまで『ゲルマニウムの夜』が好きだったのだけど『さよなら渓谷』で一位交代かな。面白かった、という言葉は何だか使えない。原作は『悪人』の吉田修一さん。自分の息子を殺した容疑者宅に連日押し掛ける取材陣。お隣に住む男女は 一見普通のカップルだけどとてつもない、過去を抱えていた。二人にしか分からない。憎しみなのか 愛なのか 一緒にいなければいけない、理由。主演は真木よう子さん。恋人役は大西信満さん。元恋人役に井浦新さん。記者役に大森南朋さん。グサグサ来て、静かに終わって行ってクラシック音楽みたいな映画だった。正直、ここでエンドロール来たら絶頂! というシーンがあってでもそこから3シーン続いて。あのカットで終わって。何でだろう。きっと「王道」をやってみたかったのかな、と思う。立嗣さんの作品は『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『まほろ駅前多田便利軒』と全部観てきたけど何だか、一つ階段をぽーんと登ったんだなって生意気にも思った。日本映画いいなあ。って新作を観て久しぶりに思ったなあ。真木よう子さんが相手を求める度 人の肌の、匂いがした。モスクワ映画祭での審査員特別賞受賞、おめでとうございます。玄里玄里OFFICIAL facebook