パリ、ブラジル、ポルトガル、ノルウェイ、香港、アメリカ、そして東京。世界の異なる地域で同じ時間に起きる、8人の女性のストーリーを描いたオムニバス映画『TIME ZONE』(原題)が現在製作中だ。メガホンを取るのはポルトガル人監督のペドロ・パルマ。今年の夏に香港で撮影がスタートし、2か所目のロケ地となった東京の撮影が終了したばかり。東京編に主演する女優・玄里とパルマ監督の、撮影直後のスペシャル対談を独占でお届け!どこにでもいるような女性たちの、いつもと変わらない日常。8人の女性それぞれの小さなストーリーを切り取った本作。フィクションであるが、ドキュメンタリー・スタイルにこだわり、リアルさを追及している。そもそもこの映画の企画を思いついたのは、ここ東京を旅していたとき。元々アジア文化に興味を持っていたパルマ監督が、日本とポルトガルの歴史的繋がりに親近感を持ち、日本を訪れたのが今年の4月。そこから脚本作り、キャスティングと急ピッチで製作は進められた。この映画の面白いところは、キャスティングはインターネットを通じて監督が俳優に直接アプローチしているところ。そして脚本についてのやりとりも全てメールで行う、というまさに現代的な映画なのだ。玄里:先ず最初に、キャスティングについて聞きたいのですが…。パルマ:インターネット上の顔写真だけを見て決めたんだよ。玄里:そうそう、あの写真は日本の映画監督の紀里谷和明さんに撮っていただいたものです。パルマ:あの写真の玄里はとても寂しい表情をしてた。まさにマユミ(役名)だと直観したんだ。玄里:通常、キャスティングは事務所を通して行われるので、今回のように監督から直接コンタクトがあったのは初めてです。パルマ:僕はなるべく俳優と直接コンタクトを持ちたいと思っているんだ。事務所を通すと、ややこしくなることもあるからね。ポルトガルでキャスティングする場合は、直接会いに行くこともある。でもインターネットがあれば、世界中の俳優にコンタクトできるから素晴らしいね。玄里:写真を撮っていただいた紀里谷さんにもお礼を言わないといけませんね(笑)。やりとりの中で、先ず最初にシノプシス(あらすじ)をメールしてくれましたね。私はそれを読んですぐに「この企画に絶対参加したい!」と思いました。海外の監督とお仕事をするのも初めてで、そのことにも興味を引かれました。撮影は全てを2日間で、日比谷公園や多摩川土手などを中心に行われた。ロケハンを4月の時点で行っていたこともあり、撮影は予定通り順調に進んだという。玄里:(撮影をふり返ってみて)正直、終わってほっとしたところもあります。複雑な感情を表現するために、とても張りつめていたので…。パルマ:映画全体の中でも、東京編はとてもシリアスで感情的なストーリー。撮影前のメールのやりとりで、玄里はマユミの感情について、とても的確な質問をしてくれたね。しっかりとマユミのイメージを持っていた。その時から僕は今回の撮影は大丈夫、と安心していたんだ。玄里:映画の中ではマユミの人生の数日しか描かれていないから、彼女の背景が知りたかったんです。印象的だったのは、室内で映画を観ているシーン。ワンテイクで撮影しましたね。パルマ:ワンテイク以上必要なかったからね。脚本通りに、先のことは分からないという絶望に泣いて泣いて…アップのシーンで、観客はきっとマユミに感情を揺さぶられると思うよ。とってもパワフルな演技だった。この映画が公開されたら、玄里に海外の監督からのオファーもたくさん声がかかること間違いないよ!次のロケ地での撮影は年が明けてから、ブラジルのサン・パウロで行われる予定。映画の完成は2014年、映画祭でのプレミアを目指しているそうだ。将来的には日本に住みたいと言うほど、大の日本好きのパルマ監督。もしかすると、東京国際映画祭でプレミアされるかも…!? 映画の完成を楽しみに待ちたい。