ミュージカルといえば、ハリウッドやブロードウェイを擁するアメリカ、ウエストエンドを擁するイギリスで盛んです。でも、あまりミュージカルは好まれないとされているフランスだって、これまでジャン=リュック・ゴダール(『女は女である』)、ジャック・ドゥミ(『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』『ロバと王女』)らが名画を生み出し、フレンチ・ミュージカルというジャンルを世に広めました。最近では鬼才フランソワ・オゾン監督が有名女優を起用して舞台を映像化した『8人の女たち』も記憶に新しいところ。久々に舞台でヒットを放った『1789 バスティーユの恋人たち』も日本で人気。フレンチ・ミュージカルの波が、近頃じわじわ来ているのです。
そんな今、誕生したのが『ジュリーと恋と靴工場』。靴工場で働く女たちをヒロインに、“赤い靴”を武器に、力でなくプロとしての心意気でリストラしようとする会社に戦いを挑み、自ら人生を選択していく姿を描いたミュージカルです。モードの国フランスらしく、ファッション業界を影で支える女性たちのプライドの象徴となるのは、真っ赤なフラットシューズ。その名も“戦う女”です。ストライキだっておしゃれで平和的。アーカイヴにあったこの靴を復刻版させ、自分たちの思いを委ね、社会にメッセージを発信するのです。“戦う女”の他にも、ヴィンテージ・コレクションとしてさまざまなデザインの靴も多数登場し、カラフルな作業着をまとった女たちが歌ったり踊ったり。女性のたくましさと、しなやかさ、おしゃれ心が詰まった本作は、とってもポップでキュート。まさに、フレンチ・ミュージカルの系譜に連なる作品なのです。