2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻は全世界に衝撃を与えた。リトアニア出身のマンタス・クヴェダラヴィチウス監督は、侵攻間もない3月、ウクライナ東部ドンバス地方の都市マリウポリで撮影を開始。砲撃によって廃墟と化した街、破壊を免れた教会の地下で助け合いながら生きる人々の姿をクヴェダラヴィチウスはカメラに収め続けたが、3月30日、現地の親ロシア分離派勢力に拘束され、殺害された。助監督だった監督のフィアンセによって撮影済み素材は確保され、遺体とともに帰国。クヴェダラヴィチウスの遺志を継ぎ、製作チームが完成させた作品は、直ちにカンヌ映画祭で特別上映され、ドキュメンタリー審査員特別賞を受賞した。私情も感傷も交えず記録に徹し、戦禍の惨状で生きる人々の日常をあるがままに、流れていた時間をリアルに追体験させる。
マンタス・クヴェダラヴィチウス