2020年、国を挙げて盛大に開かれた東京オリンピックの終了を機に、この国の景気は恐ろしい速さで失速していった。いまこの国では、金を持つ強者だけが生き残り、金のない弱者は簡単に踏みつぶされ、身を寄せ合うことで何とかいまを生きていた。自堕落な生活を送っていたカイジは、派遣会社からクズと罵られ、薄っぺらい給料袋を手渡される。憤りを感じながらも一缶千円に値上がりしたビールを買うかどうか迷っていた。「久しぶりだね、カイジくん」「ハンチョウ?」声をかけてきたのはスーツに身を包んだ大槻だった。帝愛グループ企業のひとつを任される社長に出世したという。「カイジくん。君もこんなところでくすぶっているタマじゃないだろ?」大槻が見せたのは一枚のチラシだった。【第5回若者救済イベント開催!バベルの塔】金を持て余した大金持ちの老人が主催するイベントで、一攫千金のチャンスだ。「こんなもの無理だ! 運否天賦のゲームで作戦の立てようもない」「その通りだよ。だが裏を返せば、カラクリがわかっていれば勝てる可能性があるわけだ……」運命の歯車は動き出した。カイジを待ち受ける未来は天国か地獄か。最後のギャンブルがいまはじまる――。
佐藤東弥