現代のフランス。祖国ドイツで吹き荒れるファシズムを逃れてきた元レジスタンスのゲオルクは、パリから港町マルセイユにたどり着いた。偶然の成り行きから、パリのホテルで自殺した亡命作家ヴァイデルに成りすまし、船でメキシコへ発とうと思い立つ。そんなときに一心不乱に人を捜している黒いコート姿の女性マリーと出会い、美しくもミステリアスな彼女に心を奪われていく。しかしそれは決して許されず、報われるはずのない恋だった。なぜなら、マリーが探していた夫は、ゲオルクが成りすましているヴァイデルだったのだ――。
クリスティアン・ペッツォルト