数々ある夏休み映画の中で、ほとんど気に留めていなかった作品『コーチ・カーター』。ところが、これが観てびっくり。涙が幾度となくぽろぽろと。あまり期待していなかっただけに(ごめんなさい!)、観終わった後の喜びもまたひとしおなのでした。
極めてシンプル! ここまでムダのない作品があっていいのでしょうか!? 登場するものはペンギン、氷、雪。あとは捕食の関係にあるアシカや肉食の鳥。それでここまでの世界観を広げられるのはなぜ?と自問自答してみたところ、それは、映像と同じくしてペンギンたちの生き方がシンプルだから。種を存続するために生きている。それだけのために危険を伴った長い長い行進をする。はっきりいって今の自分が忘れかけていることなのです。情報や物が溢れる時代の中でどうしたらいいかわからず混乱したり、何をやりたかったのか忘れてしまう… そんな人たち(私)は自分を顧みるいいきっかけになりました。はい、私は泣いてしまいました! 子ペンギンの可愛さにも泣けますよ!
この映画の成功の元はなんといってもドキュメンタリーを無理やりドラマにしてしまったことです。巷に数多あふれるネイチャー・ドキュメンタリーですが、そろそろマンネリ化してきた様相も否めません。純愛ブームや韓流ブームなどにもみられるように、世間は今ドラマを求めているのです。物語はあるひと組のペンギンカップルをメインに語られていきますが、あまりにたくさんのペンギンが出てくるので、最初に出てきたカップルが後に出てくるカップルと同じ組み合わせだと言われても真偽の見分けようがありません。でも、これをヤラセといって批判することはできません。なぜならこれはドラマなのです。だから嘘をついてもよいのです! あと、意外に笑えるのが要所要所で入るペンギンたちのコメント。エミリー・シモンによるキュートな歌も要チェックです。英語の歌詞をよく聴くと全く違った映画に見えるかも…!?
親が子を、子が親を、子が友達を……、我が日本では信じがたい事件が次々に報道される昨今だからでしょうか、親子愛、隣人愛に溢れた皇帝ペンギンたちの姿を描くこのドキュメンタリーに、より一層胸を打たれました。月並みな表現で恐縮ですが、こんなにピュアに感動したのは久しぶりです。営巣地へ向けて行進する群れの姿、やがて訪れる求愛のダンス、そして産卵、大切な卵を何ヶ月も食を断ち温める雄たちがブリザードからスクラムを組むようにお互いを助け合す一連の行為は、私には苦行・修行のようにもうつりました。そこに知恵や工夫による改善が入る込む余地はほとんどないのでしょう。しかし「自らを偉大なる存在と自認する人類よ、彼等の行為を“愚かなり”と奢った目で見ることなかれ」です。昨今の事件の話に限らず、我々人類が積み重ねる愚行の数々を省みて、皇帝ペンギンから私は学びたい。この夏、ぜひ親子でご覧いただきたい1本です。
巷では、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』だとか、『宇宙戦争』だなどと騒いでいます。そういった大作はもちろん、さすがに面白い。ですが、シネマカフェでは、シネマカフェらしい夏映画をお奨めしたいと思います。
夏休み映画の注目作として、6月29日に世界80カ国での同時公開を迎えたスティーブン・スピルバーグ最新作『宇宙戦争』。これまで、親しみ溢れる宇宙人たちを描いてきた監督が、H・G・ウェルズの同名小説を原作に、宇宙人襲来という恐怖の物語を映像化。公開を間近に控えた6月中旬には、『マイノリティ・リポート』以来2度目のタッグとなる主演のトム・クルーズ、トムの娘を演じた“天才子役”ダコタ・ファニング、ハリウッドきっての敏腕プロデューサー、キャスリーン・ケネディとともに来日。6月13日に東京・六本木で行われた会見には、ハリウッドを代表する大物たちが顔を揃えた。
塚本晋也、石井輝男、増村保造など数々の映画監督に愛されてきた作家・江戸川乱歩。没後40年に当たる今年、新たに乱歩の描く地獄に映像で挑んだ『乱歩地獄』は、これまで一度も映画化されたことのなかった4作『火星の運河』、『鏡地獄』、『芋虫』、『蟲』からなるオムニバスだ。その完成披露試写会で各エピソードの主演を務める浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平の3人と監督らが舞台挨拶に立った。