2025年、始まりのクールとなる冬ドラマも間もなく終了の時を迎える。今期は、予想のつかない展開にハラハラさせられる作品が多かったように感じた。そこで今日は、毎クール全てのドラマをチェックしているドラマニアな筆者が、この冬の「勝手にベスト3」作品をセレクト。内容をふり返りながらご紹介していこう。
第1位
これまでの学園ものとは一線を画す
新感覚の逆転劇「御上先生」

松坂桃李さんが日曜劇場で初主演をつとめたことでも注目のドラマ「御上先生」。本作は、日本の教育を変えるため文科省官僚になった主人公・御上が、新たに設けられた官僚派遣制度によって私立高校への出向を命じられるという物語。
最初は漠然と、「珍しいタイプの教師が、令和の高校生たちを導いていくお話かな」と予想していたのだが…。良い意味で、激しく裏切られた一作と言えるだろう。教師が一方的に導くのではなく、生徒と一緒に成長していく展開に惹きこまれた。
具体的には、まず御上が自身の受け持つ3年2組の生徒に対して、一切感情論で怒らないことに驚かされる。今作に登場する隣徳学園の生徒たちはみんなそれぞれに自立した考えを持っており、理論的にディベートをするシーンが頻出。生徒たちは御上を教師としてではなく、「かつては同じ一人の高校生だった人間」として接するのだ。
日本教育に蔓延る腐った権力をぶち壊したいという彼の理念にしっかり共感した上で、その背中を押す。学園もの=生徒は子どもという概念を覆され、とても新鮮味を感じた。
加えてもうひとつ挙げるとするならば、物語冒頭から敵対するライバル関係として描かれていた同期の官僚・槙野(岡田将生)が、実は味方だったというスカッと展開が大変良い味を出していたと思う。御上は学校教育の現場から、槙野は文部科学省の内部から改革を実行するため、長い時間かけて不仲を演じていたというのだから驚きだろう。
最後にもう一度見返したくなる中毒性も合わせて、今期一番心に残った作品である。
第2位
予想の斜め上をいく展開の嵐!
「ホットスポット」

富士山麓の町のビジネスホテル・レイクホテル浅ノ湖に勤めるシングルマザー・遠藤清美が、同僚の高橋(角田晃広)が「実は宇宙人である」という衝撃の事実を知ることから始まる地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー。
脚本・バカリズムさん×主演・市川実日子さんというワクワクが止まらない最強タッグで、「ブラッシュアップライフ」チームが総力を合わせた新作のオリジナルドラマ「ホットスポット」は、予想の斜め上をいく面白さだった。
宇宙人と言っても、見た目も中身も人間と大差はなく、他の人よりちょっとだけ身体的能力が長けている…どちらかというとスーパーマンに近い感じだ。「東京03」の角田さんをここまでかっこよく描けるのはバカリズムさんしかいないだろうなと、大きな愛を感じたこの作品。
通常回で起こるのは、極日常の出来事で、「車が溝にハマってしまった」「ガタイの良い酔っ払いを運ぶのが大変」など些細なことが多いのだが、それらの積み重ねが「月曜から夜ふかし」のスタッフの目に留まってしまったことをきっかけに高橋の正体が広まっていく。
物語の終盤では、同じく浅ノ湖近くで暮らしている未来人や超能力者などの力を借りて、高橋は自らの生存のため、清美とその仲間たちは故郷である富士を守るために奔走。散りばめられた伏線のパズルがひとつずつカチッとはまっていく感覚が非常に痛快かつ爽快だった。
長い間、他人に心を開くことができなかった高橋が女子会の一員となり、その笑顔がいつしか愛想笑いではなく本当の笑顔に変わって…。まさに、笑いあり涙あり。絶妙な甘さとしょっぱさが入り混じる名作に仕上がっていた。
第3位
“真実”がめまぐるしく入れ替わる
「クジャクのダンス、誰が見た?」

浅見理都さんの描く同名漫画を原作に、クリスマスイブの夜、元警察官である父親を殺された娘・小麦(広瀬すず)が、遺された手紙を手がかりに真相に迫るヒューマンクライムサスペンス。
タイトルの「クジャクのダンス、誰が見た?」は、インド哲学の一節で、本作では「たとえ誰も見ていなかったとしても、犯した罪から逃げることはできない」という意味を持つ。そんな布石通り、どんなに小さなヒントであっても視聴者が「本当の犯人はこの人ではないか」「この人の動きが怪し過ぎる」と、SNS上で考察合戦を繰り広げていたのがとても印象的だった。
極々普通の大学生として生活していた小麦の人生は、父の死後、一変。大好きな父と、実は血のつながりはなく、自分は22年前に起こった資産家一家惨殺事件の生き残りだと知ってしまうのだ。しかも、その犯人は未だ捕まっておらず…。目の間の“真実”だと信じてやまなかった事象がめまぐるしく“嘘”に塗り替わり、困惑する小麦。一体、誰を信じて、誰を疑うべきなのか――良い意味で後味の悪いミステリー展開にまんまと振り回されてしまった。
また一方で、どんなにつらい時でも「食べて」「眠る」ことの大切さが、小麦のバディとして登場する弁護士・松風(松山ケンイチ)との些細な日常の中で描かれていく。ラーメンを食べたり、メロンソーダを飲んだり、屋台でおでんを頼んだり。誰かと一緒に過ごす温かい時間に、とても救われた気持ちがするだろう。
最後の最後まで結末がわからない、ハラハラ・ドキドキの一作を第3位に選ばせていただいた。
以上、冬の総括「勝手にベスト3」。あなたのイチオシと照らし合わせてみてはいかがだろうか。