昨年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞したモリー・マニング・ウォーカー監督の長編デビュー作『HOW TO HAVE SEX』。この度、痛いほどに共感できる本作のリアリティあるキャラクターについて監督が明かした。
英国の新星ミア・マッケンナ=ブルースが演じた主人公のタラは、親友3人の中で1人だけバージンであることに焦りを感じているティーンエイジャー。
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監督のモリー・マニング・ウォーカーは「キャラクターとしておしゃべりで明るくて、パーティーに行けばみんなが集まってくるような愛される10代の若者が、こういう場面に遭遇した時にどうなるのか。実際に多くの人がタラと同じだと思うのですが、自分の中に問題を抱えて生涯忘れることはなく、それでも人生は続いていくのだということを描きたいと思いました」と、性的な同調圧力を最も強く感じているキャラクターであるタラを通して描きたかった思いを明かす。
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また、何かとお節介を焼いてタラを振り回してしまうスカイ(ララ・ピーク)は、監督が10代のころの友人たちを参考にしたキャラクターだという。
「特にその年頃というのは、みんな男子と寝たとか寝ないとか、どのぐらい自分が性的な魅力を持っていて性的にいかにアクティブなのかといったことを女子同士で競り合って、証明しなきゃいけないといった感覚が、当時はすごくありました」と監督。
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特に10代が感じやすいプレッシャーについて、そう返りながら「でも今思うと、そういうタイプの子は、こういうバケーションやパーティーの場でも強気で自信満々に振る舞っていたけれど、もしかしたら本心では人一番不安だったのかなとも。自分自身に安心できないから、逆にタラみたいに経験が少ない子に対して嫌なことを言ってしまったり、わざと変なことをけしかけてしまったりしてるのかなと思うのですが、そういうところに私は悲しみを感じたりもして。だからスカイは人物像としては複雑で、興味深いんですよね」と、心の奥に抱える気持ちに寄り添って作り上げていったキャラクターだと話している。
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そんなタラの“リアルな親友”を演じられる女優を探し出すために、自分の性格を表現する動画をTiKToKに上げてもらうという課題を、監督はオーディションの参加者たちに与えた。監督と一緒に仕事をした経験のあったララ・ピークは、TiKToKでスカイのアカウントを作成し、見事スカイになりきってタラの親友役を獲得。キャラクターの構想からキャスティングまで、こうした監督のこだわりが作品に真実味を与えているといえるだろう。
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『HOW TO HAVE SEX』はヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開中。