ティーンの友情や恋愛、そして性的同意について描き、昨年の第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞した映画『HOW TO HAVE SEX』公開を記念し、モデルの小谷実由とマルチクリエイターのYUUKIをゲストに迎えたトーク付き特別試写会が行われた。
本作はティーンの青春の夏休みを、思いやりを込めた視点で活き活きと表現し、痛いほどに共感できる爽快で、心動かされる物語。ジェーン・カンピオン監督から「映画界の新しい声」と評されたモリー・マニング・ウォーカーが監督・脚本をつとめた。
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事前に作品を鑑賞したという小谷さんとYUUKIさん。感想を尋ねられると「最初はタイトルに面を食らって今日のお仕事を受けるかを迷ったくらいだったんですが、予告編を見ても掴みきれなくてどうしても気になって。ドキドキしながら本編を見たんですけど、タイトル通りのストーリーもありますが、大きく見ると対人関係の映画だなと思いました」と小谷さん。
「青春のよくあるキラキラ、美しいほうではなくて、苦いほうで。自分に同じような経験があるわけではないけど、昔の自分を思い出させられるような苦さを感じました」というYUUKIさんは「年代によっても印象が違ういい映画だなと感じました」と、それぞれの視点から感想を語る。
3人のやりとりは「終始、痛いくらいわかる」
ティーンの人間関係や心の機微を精細に描いた本作。小谷さんは「(主人公たち)3人のやりとりに終始、痛いくらいわかる~!という感じで。ちょっとした気まずさとか、なんとなくまわりから圧力をかけられている感じとか、そういうちょっとした違和感は知ってるな、と苦しさを感じましたね」と明かす。
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YUUKIさんも「友達関係の空気感を壊さないように3人それぞれが気をつかっている」と語り、「なかでも(主人公の)タラは初めての経験に対する極端なくらいの憧れがあったと思うけど、それに対する印象が最初と最後で全く違うんだなって感じて。憧れや焦りからくる、自分でも制御できないくらいの高揚感があったからこその落差を実感しているんだなと。性のことに限らず若いころの未経験のことに対する憧れと現実の差に直面した時の感情に共感しました」と自身の経験と重ねながら明かした。
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また、主人公たち親友3人組の女性キャラクターについても話が及ぶ。「タラはみんなでわいわいしているのも楽しいけど、ちょっと疲れて1人になったときに見せる表情が本当の姿なんだろうなと。それからついつい辛辣なことを言ってしまうスカイは誰にでもちょっとずついるタイプ」と小谷さんは分析。
すると、スカイについて「でも彼女のようなタイプのよかれと思ってやってくるおせっかいのおかげで一歩踏み出せることも確かにある」とYUUKIさん。「そこに(タラと)価値観の似ている優しいエムが出てきて救われる。3人の絶妙なバランス」と話した。
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同調圧力の「描き方がめちゃくちゃリアル」
一方で、彼女たちの視点から映る男性の描かれ方について、小谷さんが「男性側も描くのは必要なこと。全編を通して気まずくなりたくない、楽しい場に水を差したくないと(男女問わず)みんなが思っていてリアルだなと思いました。それが空気に流されるというか同調圧力につながることにもなるのかな」と指摘すれば、YUUKIさんは「劇中に出てくる男性は自分の悪くないほうにスルスルと逃げていくけど、男性は男性で自信がないからなんだと思う。でも女性も自信のないところがあるから、流れを全員で作ってしまう。その描き方がめちゃくちゃリアルでした」と、その現実味を指摘する。
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ほかにも印象的な音楽について「絶え間なく重低音の音楽が流れていると深く考えられなくなっちゃうのかなって。音が空気感を作る役割にもなっている」(小谷)、「大音量の音楽があるからこそ静寂が主人公の迷いや葛藤を強調する対比として効いている」(YUUKI)と解説し、賛否両論のラストについて議論が交わされるなど、白熱したトークが続き、あっという間にイベントは終了の時刻に。
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最後に、観客に向けて「映画の感想を話すことは理解を深めるいい時間になるので家族や友人に勧めて、また観た後に話してみてもらえたら」と小谷さん。
「観る人によって感想が違うだろうし、1人で抱えられないくらいの色んな気持ちが湧いてくる映画だと思うので、みんなで語ってみてほしい」とYUUKIさんもメッセージを送っていた。
『HOW TO HAVE SEX』は7月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開。