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【特集】「性の格差」という社会の不条理と向き合う…目を背けてはいけない一作『先生の白い嘘』

7月5日、「性の格差」という社会の不条理と向き合うことで、人間の根底にある醜さと美しさに斬り込んだセンセーショナルな人間ドラマ『先生の白い嘘』が全国公開となる。

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『先生の白い噓』©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社
『先生の白い噓』©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社
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  • 『先生の白い噓』©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社
  • 「先生の白い嘘」©鳥飼茜/講談社
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7月5日、「性の格差」という社会の不条理と向き合うことで、人間の根底にある醜さと美しさに斬り込んだセンセーショナルな人間ドラマ『先生の白い嘘』が全国劇場と3面ライブスクリーンにて公開となる。

原作は連載開始と同時に衝撃的な内容で話題を集め、「このマンガがすごい! オンナ編」2014には第9位を獲得している鳥飼茜の同名漫画。すでに累計部数 100 万部を突破している人気コミックだ。監督は『弱虫ペダル』の三木康一郎。原作と出会い、映像化に向けて動き出してから実に7年以上の歳月をかけて完成させた渾身の作品だ。

「先生の白い嘘」©鳥飼茜/講談社

人間の醜さや美しさがない交ぜになった
壮絶な本性をあぶりだす

脚本はTVドラマ「透明なゆりかご」「きのう何たべた?」で高い評価を得ている安達奈緒子。ヒューマンドラマの名手たちがタッグを組み、「性の格差」という不条理を通し、人間の醜さや美しさがない交ぜになった壮絶な本性を丁寧にあぶり出していく。

主人公は高校教師の原美鈴。女である不自由さから目を背けるように、教壇から生徒たちを見下ろして生きている。ある日、親友の美奈子から早藤との婚約を告げられ戸惑う。早藤は女性を見下し、「性差」を「格差」と考える人物で、ある事件をきっかけに、密かに美鈴を支配していた。自分には早藤に抗う力はない、早藤が自分を乱暴に扱うのは女である自分のせいだと思い込み、嫌悪と快楽の狭間で不安定になっていた。だがあるとき、担任の男子生徒・新妻から衝撃的な性の悩みを打ち明けられる。「力を持つ男がなぜ?」そう考える美鈴は、初めて他人に自分の本音をさらけ出す。それを機に歪んだ愛憎劇は、狂気的な展開へと加速していき……。

映画には、美鈴以外にも、2人の女性が登場する。一人は、男性に好かれる女性を演じ、社会が理想とする女性の幸せを獲ようとする美奈子。もう一人は美しさと若さを武器に、男性を意のままに操ろうとする女子生徒・佳奈。

まさに、女性の身体をもって生まれた人たちがこれまでの人生で感じたであろう、日常に潜む「性の不平等」が導いた3者3様の生き方だ。加えて、新妻の告白は強者と弱者の歪んだ関係性をも浮かび上がらせていく。

彼らの中の、封じ込められていた声にならない叫びが聞こえてきたとき、あなたもきっと自分の中にある衝撃的な感情に気づくことだろう。


作品を支えた、キャスト陣の熱演

衝撃的なテーマに向き合い、鋭く人間の本性に斬り込んだ本作。その成功を語る際に欠かせないのが、キャスト陣、奈緒、猪狩蒼弥、三吉彩花、風間俊介らの壮絶な熱演だ。

映画『ハルカの陶』やTVドラマ『あなたの番です』『あなたがしてくれなくても』など話題作に多く出演し、確かな演技力に高い評価が集まる奈緒は、まさに変幻自在。強い意志を秘めた女性やサイコパスな役柄など、クセの強い役柄も体当たりで演じてきた。今回は、自らの中にある相反する感情を嫌悪する美鈴という難役に挑戦。原作と出会った際、埋もれてしまった誰かの叫びを感じ衝撃を受けたとし、「その誰かの一人である"美鈴"として、この作品と共に苦しみ、この作品と共に闘うことを心に誓い出演をお受けいたしました」と、その強い決意を語っている。

美鈴の人生を変えるきっかけとなる男子生徒・新妻を演じる猪狩蒼弥は、「HiHi Jets」の一員として活動中だ。俳優として走り出したばかりにも関わらず、人知れず抱えていた恐怖と不安をさらけ出すという思春期の複雑さとまっすぐな心を持つ少年を好演。誰かの人生を変えるほどの熱を秘めた人物を見事に、説得力を持って演じきっている。

小学生時代からモデル・俳優として活動する三吉彩花は、映画『犬鳴村』や『ナックルガール』で主演を務め、近年国内外で大ヒットを記録したNetflix シリーズ「今際の国のアリス」にも出演。クールな役柄で存在感を放つ彼女だが、本作で演じた美奈子は、自分の幸せや喜びのためには、男に依存し見栄を張る女性。「正義」「常識」にも蓋をしようとするしたたかさの裏で、根底にある葛藤のすさまじさを感じさせる演技で新境地を拓いた。

美奈子の婚約者で、ヒロインを支配し続ける早藤を演じた風間俊介は、テレビドラマ「3年B組金八先生 第5シリーズ」で高い評価を受けて以来、TVドラマや映画にひっぱりだこの演技派だ。映画『鳩の撃退法』やTVドラマ「Silent」など数々の話題作で、シリアスからコミカルまで多種多様な人物を演じている。今回の役柄は、優しい風貌からは想像もつかない、力で女性をねじ伏せる、誰もが嫌悪するような狂気を帯びた男。人当たりの良いエリートサラリーマンと、猟奇的でサディスティックな顔を併せ持つ人間の二面性を演じ分け、すさまじい役者魂で人間の醜さ、弱さを体現した。「魂を擦り減らし、己と反発する感情と共に向き合った作品です。この作品が、誰かを鼓舞し、誰かを救う事を願っています」と語っている。

誰もが、本作のテーマ、そして作品のメッセージを伝えるため、戸惑い悩みながら、魂を削り、身体を張ってキャラクターの本性に迫っていったという。それだけに、観客は美鈴、新妻、美奈子そして早藤が抱える苦しみや悲しみ、諦めや恐怖、憎しみや許しを、痛いほどに感じ、物語の本質である「性の不平等」と社会にいまだはびこる現実を、心で受け止めることができるのだ。目を背けたくなるような衝撃も、痛々しいほどのリアルも、役者たちの作品への大きな献身があってこそ。自分が生きる世界の本質を知ることこそ、未来への希望を繋ぐことだとすれば、決して目を背けてはいけない一作だ。


『先生の白い嘘』公式サイト

【対談】三木康一郎監督×神保友香プロデューサー

―長い準備期間を経て作品が完成し、いよいよ公開を迎えます。これまでを振り返っていかがですか?

神保P(以下、敬称略)撮影はすでに2年も前になりますね。もともと、監督がやりたいと自ら思われたプロジェクトですよね。

三木監督(以下、監督)そう。もう10年ぐらい前で、まだ原作は2巻か3巻が出たあたり。まず、やるって決まって、やはり脚本家には女性しかいないんだろうなあと思っていて。脚本の安達奈緒子さんとは以前、NHKのドラマ「ふれなばおちん」で、ご一緒していて、彼女しかいないと思ってお願いして。それで講談社の方と一緒に鳥飼先生とお会いしたんです。その時まだ神保さんはいなかったよね。

神保最初に原作を読んだとき、こんなことを言っちゃいけないと打ち消すレベルの本音がガンガン出てきて、これ見ていいのというような感じのゾクゾク感があったんです。それで原作の問い合わせをしたら、もう動いていますと言われて。ちょうどその頃、共通の知人に『三木監督とご飯に行くけどどう?』と言われて喜んで行ったんです。それで、監督がこの作品で動いていると、初めましてで知りました。私はもともと、学生時代に観た監督の『トリハダ』シリーズのファンで。

監督マニアックだな(笑)

神保過度な演出とかお化けとかではなく、ちょっとした間とかで人の怖さを味わって。その三木監督が鳥飼先生のこの作品を撮るなんて『すごくいい!』、何とか形になるといいですねと言っていて。その後、松竹さんと動き出してご一緒することに。

監督実は松竹さんは最後だった(笑)。鳥飼先生と安達さんとの話し合いで脚本が上がって動き出したけれど、映画会社が降りることになり、脚本だけ残ったんですよ。それでいくつもの映画会社に話を持って行ったけれど、誰もこのネタをやりたがらなかった。『面白いんですけど、こういうのはなかなか』というようなことばかり言われて。

神保映画として企画を立てるのは本当に大変な作品でしたね。最終的に松竹さんの新しい部署、開発企画部(現イノベーション推進部)で『これはやる意義があります。面白いです。やりましょう』となった。

監督松竹さんは本来、たくさんの人にしっかりとした大衆映画を届けるという会社ですが、新しい部署では、『当社で普段は手がけないジャンルをやってみますか』という空気はあった気がします。たぶんそこは大きい。

-監督は男性として、男女格差の物語を映像化するにあたり、何か気づきや気になったことはありましたか?

監督気づいたのは、やっぱり男子には分からないなということ。

神保それは本音ですね。

監督分からないところに答えを求めて行くことはできないなって思って、撮影では自分がちゃんと答えを出せるところを見て作っていこうと。だって主演は奈緒さんだし、安達さんも、神保さんも、鳥飼先生も女性。周りにはいっぱい女性がいた。だから分からないところは女性の意見を聞く、もうそれしか手がなかった。奈緒さんは初めてお会いした時に、眼鏡かけて白いシャツ着ていて、すでに役そのものだった。脚本も渡っていたし、僕にはない目線をしっかり持たれているんだなと思ったので、あまり話し合わなかった気がします。

神保孤独な役なので、その状況がマッチしたのかもしれないですね。三木監督はわからないことを体現して撮られる監督。『人のことって分からないよね?』ということを受け入れている監督のスタイルとこの作品が重なっていると撮影中も感じていて。安達先生の筆力も素晴らしいし。悪者は悪であると定義されがちだけれど、加害者であり被害者であることも描いていて、こういう面もあるんだと気づかせる言葉の機微が見事だった。それは希望でもありますし。

―今、『先生の白い嘘』だけでなく、「虎に翼」「光る君へ」「燕は戻ってこない」など、男女の格差について考えさせられる映像作品が次々に誕生しています。本作の公開のタイミングについてどうお考えですか。

監督本作は公開までに時間がかかっていますが、今、このタイミングで世に出るということは、何か意味がある気がしますね。30年ほどこの業界にいますが、今や男女比は半々くらい。女性が社会や業界に数多く出てきて活躍できるようになったタイミングだから、こういう作品が世に出てきているのかもしれません。古いメディアは取り扱いづらいかもしれないですけれど(笑)

神保男女格差の問題は、ずっと考え続けなきゃいけない問題。だから、こういう作品がいろいろ出てくるのはいいと思う。その一方で、鳥飼先生が描いた作品を三木監督が映像化したエンタメ作品という思いも強い。ぜひエンタメ作品として楽しんでいただきたいです。


『先生の白い嘘』公式サイト


性のタブーに切り込んだ奈緒主演作が衝撃だった…(シネマトゥデイ)

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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