スティーヴン・キングも影響も受けたといわれるゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記に、現代的で斬新な解釈を加えて練り上げられた映画『Shirley シャーリイ』から、主演エリザベス・モスのインタビューがシネマカフェに到着した。
本作は、実際のシャーリイ・ジャクスンの小説だけでなく、配偶者で文芸評論家でもあったスタンリーとの数百通の手紙を基に製作された心理サスペンス。
「半分はシャーリイ・ジャクスンが小説で書いていたような<誰か>」
エミー賞を受賞したHuluのドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」(シーズン5まで放送)に出演、エグゼクティブプロデューサーとしても同賞のドラマ部門作品賞を受賞したほか、映画『透明人間』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』や、ジェーン・カンピオンが監督を務め高評価を得たミニシリーズ「トップ・オブ・ザ・レイク ~消えた少女~」など、存在感のある演技で観客を魅了し続けるエリザベス・モス。
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本作で、日常と非日常の間に存在するような、不思議な存在感を放つ作家シャーリイを演じた彼女は、本作の脚本を「私が今まで読んできた中で最高の脚本の1つ」と絶賛。
「脚本が書かれる時、シャーリイと交信し、シャーリイが『絞首人(処刑人)』や傑作短編『くじ』に注いだエネルギーをよみがえらせたと私は本気で思っています。本物のシャーリイ・ジャクスンと実生活の要素に、シャーリイの想像力から出てきたようなものが組み合わさっているのが面白いですよね」と感嘆する。
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「劇中のキャラクター<シャーリイ>は、半分はシャーリイ・ジャクスン本人ですが、もう半分はシャーリイ・ジャクスンが小説で書いていたような<誰か>で出来ています」とモス自身が言うように、いわゆる伝記映画とは一線を画す本作。だが、この複雑な人物造形を作り上げるため、まずは通常の伝記映画と同じような役作りのアプローチの段取りをしっかり踏んだともふり返る。
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「最初に伝記を読み、アメリカ議会図書館に保管されているシャーリイと夫スタンリーや友人との手紙を調べ、シャーリイ自身が朗読した『くじ』の録音を聴いて彼女の声やアクセントをつかもうとしました。そんなふうに実在の人物を演じる時にする一般的な準備はすべてやりました」と言い、その後、ようやく「脚本独自のものを盛り込んでいきました」と役作りのプロセスを具体的に言及した。
「伝記と一番近いのはシャーリイとスタンリーの関係」
衝突は絶えなかったものの、お互いに深い愛で結ばれ、常識にとらわれず、1940年代当時としては珍しい、オープンマリッジ(開かれた結婚)を実践していたシャーリイと夫スタンリー(マイケル・スタールバーグ)については「この関係性は映画に持ち込めるものでした」「伝記と映画が一番近いのはシャーリイとスタンリーの関係です」と、このユニークな2人の関係を現代のスクリーンに映し出すことをとても大事にしたことをモスは明かす。
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「2人ともすごく知的でいつも文章を書いていて、とても現代的で開かれた関係でありながら深く愛し合っていました」と言い、「2人は1つのユニットのようなもので、その点を私たちはとらえられたと思います。彼らはとても面白く、すばらしいユーモアのセンスの持ち主でした。彼らの辛辣なウィットはシャーリイの小説にも反映されていて、それを私たちはうまく表現できたと思います」と手応えを明かした。
そして、気鋭の女性監督ジョセフィン・デッカーとの仕事については「ジョセフィン・デッカーというカクテルシェイカーの中にすべての材料を入れて、信られない別物のドリンクが生まれました」とモス。
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「ジョセフィンは実験的な監督で想像力がとても豊かです。脚本に夢のシークエンスがたくさんありましたが、それをいろんな工夫で視覚化して編集したのはジョセフィンの力です。ジョゼフィンが独自の映画スタイルを持ち込んでくれたおかげで、特別でユニークな映画ができました」と称賛を送っている。
『Shirley シャーリイ』は7月5日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国にて公開。