後のダース・ベイダー、アナキン・スカイウォーカーの唯一の弟子にして、2本のライトセーバーを操る伝説の元ジェダイ、アソーカ・タノ。
その待望のドラマシリーズとなる、新たな歴史を刻む物語「スター・ウォーズ:アソーカ」第3話「飛び立つ時」が配信、アソーカとサビーヌ・レンの“型破りなジェダイ”の訓練が始まった。
型破りなジェダイの系譜、“マンダロリアンのジェダイ”の訓練始まる
かつての仲間でジェダイのエズラ・ブリッジャーを捜すため、帝国の残党モーガン・エルズベスらを追って惑星シートスへと向かったアソーカ、サビーヌ、そしてドロイドのヒュイヤン。
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ハイパースペースの最中に、目隠しのバイザー付きヘルメットを被って訓練するサビーヌの姿は、まるで『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のルーク・スカイウォーカーだ。師と弟子がこれまでの生活を離れて未知なる冒険に向かうところからして『エピソード4/新たなる希望』であり、やはり新たな“始まり”を実感する。
「何も見えないのに、どうやって戦う?」とルークとまったく同じ疑問をぶつけるサビーヌだが、剣道の面のようなこの目隠しヘルメットでの訓練は「ザトーチ」と呼ばれており、あの日本の盲目の俠客を描いた「座頭市」から来ているらしい!
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ロザリオ・ドーソン演じるアソーカの、“マスター”としての落ち着きぶりは堂に入っている。“心を開いて、己を捧げること”でフォースを操ることができる、とアソーカは言う。武器を使うことに長けているマンダロリアンの技能だけでは、第1~2話で登場したベイラン・スコールやシン・ハティらを打ち破れない。
心を開くことが苦手であり、気の短いサビーヌが堪えている様子が伝わってくるが、アナキンの血を引くルークのようには、すぐにはフォースをコントロールできない。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でルークが指導したレイの時ともまるで違う。湯飲み茶碗のようなコップさえも、まだ手元に引き寄せることはできないのがサビーヌだ。
2人の訓練の場面では、サビーヌ・レンを演じるナターシャ・リュー・ボルディッゾが出演したNetflix映画『Crouching Tiger Hidden Dragon:ソード・オブ・デスティニー』(2016)で、ミシェル・ヨー演じる主人公から修行を受けるシーンを思い出した。ちなみに、同作には『最後のジェダイ』のベロニカ・グゥ(ゴー・タイン・バン)も出演しており、本シリーズに登場したら面白いな、とふと思ったりもする。
その訓練の様子を見守るドロイド、ヒュイヤンも存在感を発揮している。ジェダイ・オーダーでライトセイバーの設計製作技師だったヒュイヤンは、膨大なデータ量から来る論理的・合理的なドロイドゆえの発言、そのひと言ひと言が鼻につく感じでサビーヌをちょっぴりイラつかせるのが、C-3POと似たような立ち位置か。
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そのヒュイヤンの声を、海外ドラマ「グッド・オーメンズ」や「ステージド」シリーズのデヴィッド・テナントが演じているから余計に楽しい。C-3POとして映画シリーズ全作に出演したイギリス俳優アンソニー・ダニエルズを彷彿とさせる。C-3POよりもシニカルで、後ろ手を組む仕草はアニメシリーズ「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」に登場したそのままである。口の減らない者同士の、サビーヌとのコンビにも注目していきたいところ。
ヒュイヤンによれば、数千年に及ぶジェダイ・オーダーの基準からしてもサビーヌは“歴代最低のジェダイ候補生”という。「彼女をジェダイにしたいわけじゃない。自分自身でいてほしいだけ」とアソーカが話すと、2人とも「型破りなジェダイの系譜だから」とヒュイヤンは返す。アソーカ自身も“ジェダイではない”ゆえに、サビーヌをジェダイにしたいわけではないのか…。
ジェダイになったマンダロリアンは稀だ。ジェダイ・オーダーに加わった最初のマンダロリアン、ター・ヴィズラは「マンダロリアン」シリーズでカギとなったダークセイバーを作ったが、それは1000年以上前もこと。逆にマンダロリアンになった道半ばのジェダイならグローグーがいるが、いずれも“型破り”ではある。
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この会話で、ふと考え込むような表情を見せるアソーカの脳裏には、ダース・ベイダーに堕ちたかつての師アナキンのことが浮かんでいるはず。彼から離れたことをいまでも悔やんでいるのだろう。アソーカの悔恨が昇華される日はくるのか。アソーカとアナキンの物語が本シリーズでどう描かれるかはまだ不明だが、アソーカ自身の過去との対峙は最も楽しみにしているテーマの1つである。
また、『最後のジェダイ』といえば、船が爆撃され宇宙空間に放り出されたレイア将軍がフォースにより船に戻ってくることができたシーンがあったが、アソーカは宇宙服を着て宇宙空間で激闘を見せた。宇宙服を着た元ジェダイのライトセイバーVS戦闘機という構図は初めて目にする光景だ。
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そして、嬉しい再会もあった。新共和国を率いるモン・モスマ元老院議長(ジェネヴィーヴ・オライリー)がホログラムで登場したのだ。時代を遡るドラマ「キャシアン・アンドー」から、アニメ「スター・ウォーズ 反乱者たち」、そして『エピソード6/ジェダイの帰還』まで帝国と戦ってきたモスマだが、新共和国が脆弱であることは「マンダロリアン」シーズン3においても描かれていた。
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いわゆるお偉方たちは帝国の残党が暗躍していることなど思いも寄らない。信じたくない事実ゆえに、信じまいとしているのかもしれない。戦争の後にまたすぐ別の戦争が起こるのは、人類も嫌というほど経験してきたこと。ヘラ・シンドゥーラ将軍は、息子ジェイセンの父親でエズラの師であるジェダイ、ケイナン・ジャラスをはじめ多くの仲間を失ってきた。ケイナンは第1話の惑星ロザルの壁画にも描かれている、“反乱者たち”のリーダー的存在だった。
新たな戦争を防ぎたいヘラの言葉が、“戦争を知らない”ホログラムの相手には届かないのがもどかしい。
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宇宙クジラ、パーギル登場!実はグローグーも出会っていた
「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズを観ていると、本作のクリエイターであるデイブ・フィローニは自身のかねてからの構想を次々と具現化しているんだろうな、とつくづく感じるが、今回の巨大なクジラ型クリーチャー、パーギルの群れの間をすり抜けるスリリングな空中戦もその1つだろう。
パーギルは群れで、ハイパースペースをトンネルのように使って銀河を旅する。アソーカたちが捜すエズラとスローン大提督を(宇宙船ごと)未知の領域へ連れていったのもパーギルであり、「エズラを思い出す」サビーヌと同様に「そうよね…」としみじみした。パーギルはエズラ、そしてスローン大提督の捜索に大きく関わってくるはずだ。
このパーギル、第2話のタイトルクレジット直前でもベイラン・スコールが見上げる空を影が泳いでいる。また、「マンダロリアン」の「チャプター17:背教者」(S3・1話)ではグローグーもハイパースペース内でパーギルの群れを目撃、その荘厳な光景に驚いたのか、もしくはフォースで何かを感じ合ったのか、ディン・ジャリンのもとに移動する場面があった。
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本シリーズは同時代の「マンダロリアン」を想起させるシーンも多く、もしディン・ジャリンとグローグーの特別出演があるのなら最高だ。
「スター・ウォーズ:アソーカ」は毎週水曜、ディズニープラスにて独占配信中。
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