下半期に突入した2023年、日本映画界にも話題作が続々と登場する。中でも、山田洋次監督90作目となる最新作『こんにちは、母さん』をはじめ、注目のラインアップには、とある家族に降りかかる“事件”を描くという意外な共通点が…。今回は、そんな話題作を先取りして紹介する。
母が恋、娘は家出、仕事もストレス限界!?『こんにちは、母さん』
山田監督が主演に迎えたのは、共に映画界を牽引し続けてきた吉永小百合。共演には、数々の映画・ドラマに出演し、日曜劇場やNHK大河ドラマでの好演が記憶に新しい大泉洋や、『キネマの神様』に続き二度目の山田組参加となる永野芽郁をはじめ、寺尾聰、宮藤官九郎、田中泯、YOU、枝元萌ら豪華俳優陣が集結。
『母べえ』『母と暮せば』に続く『母』3部作として、吉永さんの集大成ともいえる作品となっている。
そんな本作で描かれるのは、東京の下町を舞台にいまを生きる等身大の親子の物語。大企業の人事部長として神経をすり減らす毎日を送る神崎昭夫(大泉さん)。妻との離婚問題や家出した娘・舞(永野さん)との関係にも頭を悩ませる中、久しぶりに母・福江(吉永さん)が暮らす実家を尋ねると、そこには艶やかなファッションに身を包みイキイキと暮らす母の姿が…。
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予想外な“事件”の連続に戸惑いを隠せない昭夫は、お節介がすぎるほどに温かい下町の住民たちとの交流や、これまでとは違う母との新たな出会いの中で、次第に自らを見つめ直していく。
いつまでも気高く自分らしく生きる福江の姿や、再出発していく昭夫。日本最高峰の監督・キャストで贈る“母と息子”の新たな出発の物語は、明日への活力を与えてくれそうだ。
『こんにちは、母さん』は9月1日(金)より全国にて公開。
「家」に秘められた真実を知ってはいけない…『スイート・マイホーム』
「小説現代」長編新人賞を受賞し、話題となった神津凛子による禁断のベストセラー小説を原作に、俳優でもあり映画監督としても注目を浴びる齊藤工がメガホンをとり実写映画化。幸せの象徴でもある“マイホーム”を手にした家族が、ある不可解な事件をきっかけに身の毛立つ恐怖に陥れられていくさまを描く。
長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二(窪田正孝)は、愛する妻と幼い娘たちのために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。理想のマイホームを手にし、幸せを噛み締める日々を送っていた清沢一家だったが、とある出来事をきっかけに一転。地下に魅せられる娘、赤ん坊の瞳に映り込む“何か”に戦慄する妻、周囲で起きる関係者の変死事件。
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その家には何があるのか? それとも何者かの思惑なのか。最後に一家が辿り着いた驚愕の真相とは? 「家」を中心に、様々な謎や怪異がスリリングに折り重なる、これまでの常識を覆すホラー・ミステリー作品に仕上がっている。
『スイート・マイホーム』は9月1日(金)より全国にて公開。
整、名家の“遺産相続事件”に巻き込まれる!?『ミステリと言う勿れ』
天然パーマがトレードマークの大学生・久能整(菅田将暉)が、膨大な知識と独自の価値観による持論を述べ、時には鋭く時には優しく、魔法のようなおしゃべりで事件の謎を解いていく新感覚ミステリー。2022年に連続ドラマとして放送され、原作から再現度の高い実写版のビジュアルはもちろん、物語でも話題を集めてきたが、劇場版で描かれるのは通称“広島編”。
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広島に訪れていた整は、偶然出会った女子高生・狩集汐路(原菜乃華)からとあるバイトを持ちかけられる。それは、名家・狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった――。
“犬神家”のように遺産を巡る争いで死者さえ出るという、いわくつきの事件に巻き込まれながらも、次第に遺産相続に隠された“真実”、そして世代を超えて受け継がれる一族の“闇と秘密”に対峙していく整の姿が描かれる。映画ならではのスケールの大きさと見ごたえのある濃厚な物語は必見だ。
『ミステリと言う勿れ』は9月15日(金)より全国にて公開。