第76回カンヌ国際映画祭の授賞式が現地時間5月27日(土)夜に行われ、ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』(原題)の役所広司が、日本人としては柳楽優弥以来19年ぶり2度目となる男優賞を受賞。また、坂元裕二が是枝裕和監督『怪物』で脚本賞を受賞した。
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カンヌでパルム・ドール受賞経験もあるヴェンダース監督のもと、役所さんが演じたのは、東京・渋谷の公共トイレ清掃員という仕事を淡々とこなし、日々の小さな歓びに満足している無口な平山という男。
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「平山の暮らしぶりをイメージさせる様な環境を監督が整えてくださった」と明かしており、5月25日(木)の公式上映では約10分間のスタンディングオベーションにつつまれ、観客からも大きな評価を得ていた。
授賞式の壇上は、1997年に故・今村昌平監督『うなぎ』のパルム・ドールを代理で受け取って以来という役所さんは、感激の面持ちで「こんな華々しいカンヌ映画祭でスピーチをするのはあんまり好きじゃない」と微笑みつつ、審査員、ヴェンダース監督やスタッフ、そして観客に対して感謝をコメント。
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日本人のカンヌ男優賞受賞は、2004年の是枝裕和監督作『誰も知らない』で当時14歳だった柳楽さん以来、19年ぶり。昨年は是枝監督作『ベイビー・ブローカー』でソン・ガンホが同賞を受賞しており、2年続けてアジア人が男優賞に選ばれた。
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授賞式を終えた役所さんは日本のメディアに対し、「やっと柳楽くんに追いついたかなと(笑)。彼は本当にすばらしい俳優になったし、(自分も)いろんな男優賞をいただきましたけれど、これからこの賞に恥じないように頑張らなきゃなと改めて思いました」と心情を語った。
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海外作品への出演について話が及ぶと「自分の表現が役に立つような良い作品があれば参加したいとは思っています。基本的には、自分たちの国の映画で、世界中の人たちに楽しんでもらえるのが、一番の早道かな」と語った。なお、『PERFECT DAYS』はエキュメニカル審査員賞も受賞した。
また、是枝監督の最新作『怪物』(6月2日公開)で、『花束みたいな恋をした』や数々のヒットドラマの脚本を手がけてきた坂元さんが脚本賞に。『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督以来、日本人としては2人目。独立賞であるクィア・パルム賞と合わせて2冠となった。
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最高賞にあたるパルム・ドールは、ジュスティーヌ・トリエによる『ANATOMY OF A FALL』(英題)が受賞。女性監督のパルム・ドールは、ジェーン・カンピオン監督『ピアノ・レッスン』、ジュリア・デュクルノー監督『TITANE/チタン』に続く史上3人目の快挙となった。
コンペティション部門 主な受賞結果
パルム・ドール(最高賞) ジュスティーヌ・トリエ『ANATOMY OF A FALL』
グランプリ(次点) ジョナサン・グレイザー『THE ZONE OF INTEREST』
監督賞 トラン・アン・ユン 『THE POT AU FEU』
審査員賞 アキ・カウリスマキ『FALLEN LEAVES』
脚本賞 坂元裕二『怪物』
女優賞 メルベ・ディズダル『ABOUT DRY GRASSES』
男優賞 役所広司『PERFECT DAYS』
カメラ・ドール(新人監督賞) ファム・ティエン・アン『INSIDE THE YELLOW COCOON SHELL』