是枝裕和監督、脚本・坂元裕二、音楽・坂本龍一による映画『怪物』が第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門」に正式出品され、是枝監督、坂元さん、出演者の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太の6名が現地入り。現地時間5月17日夜に行われた公式上映は9分半に及ぶスタンディングオベーションとなり、その後には日本メディアのインタビューにも応じた。
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『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝監督と『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」などで圧倒的な人気を博す脚本家・坂元さん、そして音楽には『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、国内外を問わず第一線で活躍した故・坂本龍一さんという奇跡のコラボレーションが実現した。
安藤サクラ&永山瑛太らもレッドカーペットセレモニーに参加
レッドカーペットセレモニーが始まった当初は雨がポツポツ振る中、まずは招待されたセレブたちが続々と現れる。ペドロ・アルモドバル監督やイーサン・ホーク、ロマン・デュリス、ヴィオラ・デイヴィス、ジェンマ・チャン、世界的人気K-POPグループ「BLACKPINK」のロゼらが登場するなど、レッドカーペットが一層盛り上がる。
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そして雨もあがり澄み渡った空の下に、『怪物』一行が到着。待ちわびていた熱狂的なファンの歓声に迎え入れられた。
「アルマーニ(ARMANI)」のタキシードに身を包み、再び慣れ親しんだカンヌに戻ってきた是枝監督に続き、「グッチ(GUCCI)」のタキシードにオールバック姿で立つ永山さん、さらに所属事務所社長で俳優としても大先輩の舘ひろしがこの日のために仕立ててくれたという「TAGURU」のタキシードでキリっとキメた黒川さん、是枝監督と同じ「アルマーニ(ARMANI)」のタキシードではにかむ柊木さん、さらには脚本家の坂元さんもタキシード姿。
その中でひと際注目を集めたのは、「シャネル(CHANEL)」の白いドレスとジュエリーに身を包んだ安藤さん。眩しいほどの輝きを放ちながら、『万引き家族』以来2度目のカンヌコンペティション部門のレッドカーペットに参加した。
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全員が一列に並び、時に手を繋いだり、談笑しながら、和やかな雰囲気でレッドカーペットを進む中、カンヌ常連の是枝監督は、子役たちに「カメラに向かって手をふろう」と声をかける場面も。安藤さん、永山さんも子役たちをフォローしながら、和やかにセレモニーを楽しみ、黒川さんと柊木さんも弾けんばかりの笑顔で魅了した。
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是枝監督、9分半に及ぶスタンディングオベーションに感激「とても良いワールドプレミア」
公式上映では、エンドロールが始まると2,200人もの観客を収容する会場からは拍手が巻き起こり、坂本龍一さんへの追悼文が流れた際には、さらに割れんばかりの大きな拍手が。敬意を表するような歓声もあがり、その後も9分半にもわたるスタンディングオベーションが続いた。
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その間、是枝監督は少しホッとしたような表情を見せながら、大きく会場内を見渡して称賛にこたえ、両脇の安藤さん、永山さんともハグをし、言葉を交わし、その喜びを分かち合っていた。また脚本家の坂元さんともしっかり肩を組み、『怪物』が多くの観客に届いた手応えを確かめ合ったよう。
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スタンディングオベーションの後、マイクを渡された是枝監督は「こんなに多くのスタッフとキャストに支えられて作ることができました。まずはそのスタッフとキャストに感謝します。そのスタッフとキャストの多くが今日ここに集まってくれたことがすごくうれしいです」と喜びを表現。
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「ここに来られないスタッフとキャストの思いもここ(胸に手をあてて)に抱いて今ここに立っているつもりです。戻って皆さんのこの拍手と、皆さんの顔を、ここに来られなかったチームのみんなに報告したいと思います。とても良いワールドプレミアになったと思います。有難うございました」と感謝を込めてコメントしていた。
是枝監督「坂元マジックがしっかり届いたのではないか」
観客からの熱烈的な反応に対し、永山さんは「まずは本当に感謝したい。是枝さん、坂本さん、さくらさん、皆さん含め怪物に携われたことが今まで俳優やって来れて良かったなと思いました」と感慨深げ。
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「地響きのような拍手で圧倒されました」と話す安藤さんは「監督の姿を目に焼き付けようとずっと監督をみていました。なにより主役の(黒川)想矢と(柊木)陽太と一緒に感じられたら良かったのになと思いながらいました」と言い、その感触を「しっかり2人に伝えたいなと思います」とコメント。
そして、「地元の方から『Beautiful』という感想が出たのですが、どう思いますか?」と問われると、「激しく同意します」と安藤さん。「初めて見たときになんと美しいものを見たんだろう、頭で考える美しさでなく、生きとし生けるもの全ての美しさを感じたので激しく同意です」と続ける。
是枝監督は「映画全体としては人と人が理解できない世界をずっと描いていくのだけど、見終わると、そういう光を感じるっていうのが、自分の映画ではない読後感で、それは坂元マジックだと思うのですが、それがしっかり届いたのではないかなと思います」と明かした。
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その坂元さんは脚本について問われると、「できるだけ嘘のない物語を作ろうと心がけました。面白いストーリーを作るために一人一人の登場人物が物語に振り回されないように、一人一人が生きている物語を作りたいなと心がけました。特に子供たちが出る物語なので、自分自身が子供と遠く離れた歳になったが、自分にとって都合の良い子供を描かないように気をつけました」と回答。
坂元作品の常連ともいえる永山さんは「これまでも坂元脚本を演じてきたのですが、一貫してあるのは『生きづらさ』」と表現、「僕に書いてくれるキャラクターはある苦しみを抱えている。意識する事は過去とか未来を頭で考えることをやめて、今、共演者やカメラの前に立った時に、思考せずに本能的に感じられるか。今回は教師役で子供と向き合う役だったのですが、とにかく余計なことを考えない、現場では監督を信じてやりました」と語った。
また、『万引き家族』に続いての参加となったカンヌの印象を聞かれた安藤さんは、「カンヌが変わったなんてまだ私にはわかりませんが、私自身が二度目ということで、前回の初めての興奮じゃない状態でしっかりと味わおうという気持ち」と応じ、「前回はあっという間に終わってしまったのですが、今回は『これがカンヌか』というのを噛み締めながら過ごしてます」と明かした。
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さらに、音楽を担当した坂本さんとのコラボについて、是枝監督は「映画の中で3回繰り返される夜の湖のシーンについて、ロケハンで諏訪に行った時に、ここに坂本龍一さんのピアノが入ると確信しました。ご体調のことはありましたが、一回自分の好きな坂本さんの曲を仮当てし、それをお手紙と共に送って見てもらいました。お返事が来て、映画全体を引き受ける体力はないのだけど、1−2曲閃いたから書いてみます、気に入ったら使ってくださいと返事のお手紙をもらいました」とふり返る。
「観た直後に音楽室のシーンがすごく好きだと言ってもらい、あのホルンとトロンボーンの音を邪魔しない音楽を作ろうと思ったという意見をもらいました。映画の中から聞こえてくるような曲になったんじゃないかなと、おこがましいけれど思いました。今日も最後に大好きな『Aqua』が流れて良かったなと思いました」と噛みしめながら語っていた。
『怪物』は6月2日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。