天才にしてストイック、傲慢、そして繊細な指揮者を、ケイト・ブランシェット主演で描いた驚愕のサイコスリラー『TAR/ター』。この度、本作をケイトのために書き上げたと言うトッド・フィールド監督のインタビューがシネマカフェに到着した。
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フィールド監督は、ケイトは「唯一無二の存在」で「もし断られたとしたら、きっとひどく落胆したでしょうし、本作を作ることはなかったでしょう」と断言、「これまで、特定の俳優のために脚本を書いたことはなかった」という。
しかし「何年も前にもケイトに主演してもらいたかったプロジェクトがあり、ケイトと長いミーティングを設けたが実現せず」だったとふり返り、「ただ、そのミーティングで私の知るところとなったのは、彼女が我々の時代の偉大な知識人の一人だということです」とフィールド監督。
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「彼女の素材の見方、それについて話す様子は、演者が役について語るのを遥かに超えています。総括的に全体を見ているのです。彼女との対話は素晴らしいものです」とその理由を語る。
リディア・ターという稀有なキャラクターを演じるにあたって、指揮のみならず、ピアノでバッハを演奏、ドイツ語とアメリカ訛りの英語を話す、スタントドライブという、あらゆる高度なスキルを撮影までに習得する必要があったケイト。
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しかし「彼女は(他の作品の撮影もしながら)1年もかけずにこれらを習得」したという。「このキャラクターが25年かけて身に付けたであろう見事な技術を(ケイトは1年以内に)やってのけた」という、その“凄み”に賛辞を送る。
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また、本年度アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた本作。この映画のキャラクター、構想については「長年ずっと考えていた」と言う。
リディア・ターを通じて「我々は種としてお互いを支配しようとするようにできているのはなぜなのか」「権力や権力の仕組み、その恩恵を受けるのは誰なのか、そして権力は取引であり、人と人の間には共犯関係が存在するため、一方向的ではなく全方向的である」、そして「誰かの助けなくして権力のピラミッドの頂点に立つことが出来る者などいませんよね?」と続け、長年、自身が自問自答してきた一連の疑問を観客に提示したかったと明かす。
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パンデミック中にオファーされたという本作。「パンデミック中、(コロナ禍で)私にはやることがありませんでした」「私には大家族がいますが、銀行の残高はそれほど多くはない」とジョークを飛ばしながら、「パンデミック当初、書きたい内容を何でも書いていいとスタジオにオファーされました」と話す監督。
「クラシック音楽や指揮者を題材とするものであれば、と漠然と言われ、『よし、これはピッタリだ』と」思い、「脚本は12週間で書き上げました」と製作の裏側も語っている。
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『TAR/ター』は5月12日(金)よりTOHO シネマズ日比谷ほか全国にて公開。