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本作ではキャリー演じる主人公キャシーのファッションや、彼女が働くカフェ、ライアンとのロマンスシーンなど多くの場面において色彩豊かなカラーが取り入れられている。“復讐劇”というブラックでセンシティブなテーマとは対照的な、ポップでカラフルなビジュアルも話題の1つとなっている。テーマと相反するポップなビジュアルを構築した、その意図とは?
■エメラルド・フェネル監督が緻密に練った装飾
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フェネルは「“女の子が好きなもの”を再利用して恐ろしいものを作りたかった」と話し、この作品をあえて鮮やかな色彩で彩った。また「女性はうまくいっていないときほど 自分を奇麗に着飾ります」と、昼間のキャシーにはリボンやギンガムチェックをたくさん着せ、“私は元気”という雰囲気を醸し出したとも言う。これは観る者にある種の違和感を抱かせ、キャシーの人生の何かがゆがんでいることを示唆している。
■主人公の表情と共に変わる色彩
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ポップな彩り以外にも、キャシーの心情を表現するビジュアルにも注目。キャシーの両親が暮らす家は、ゴージャスな家具を用いて80年代を感じさせる幻想的な空間である。だが、家具たちはどこか色あせ、長年手入れをされていないような状態となっている。これは、ある事件から“時”が止まり、現実の世界に直面しないキャシーの生活=心と結びついているようにも感じられる。

一方、夜な夜な出歩くキャシーには、特定の男性に魅力的に見られるための武装ともいえる様々なスタイルがデザインされた。ある晩は華やかなヒップスター、ある晩は仕事帰りのキャリアウーマン風、そしてボディコンシャスのドレスに身を包む夜もある。
■ナンシー・スタイナーのこだわり抜いた衣装
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衣装を担当したナンシー・スタイナーは、ソフィア・コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』、ヨルゴス・ランティモス監督の『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』など、個性派映画監督とのコラボレーションで知られる。
本作においては、全米衣装デザイナー組合賞(CDGA)で衣装デザイン賞(現代映画部門)を受賞。そんな彼女が描いたデッサン画は、コスチュームだけでなく背景も色彩を取り入れ、映画の世界観そのものを描いている。

カフェでのスケッチ画を見ると、パステルカラーを使ったトップスは、ラフでありつつもカフェ自体が彼女の空間としてマッチ。だが、ナースのコスプレのスケッチ画を見ると、木目の背景に派手な髪色でポーズを決め、彼女なりの勝負服といった印象。彼女は医大を中退しているが、なぜこのユニフォームを着なければいけなかったのか、興味をそそるビジュアルだ。ポップな絵からも、スリリングで重要な問題を訴える本作のテーマ(猛毒)が引き立つものとなっている。
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『プロミシング・ヤング・ウーマン』は7月9日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷・梅田にて先行公開。7月16日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷&シネクイントほか全国にて公開。