タイトルの「ザ・モール」は英語でモグラという意味で、そこからスパイをも意味する。本作は平凡なデンマークの一般市民が、CIAさえ容易に情報を掴めなかった北朝鮮の国際的な闇取引(武器密輸)のネットワークに潜り込み、その実態を赤裸々に暴いたドキュメンタリー。
元料理人のウルリクと架空の石油王に扮したミスター・ジェームズのコンビが、北朝鮮の関係者たちを巧みに欺きながら盗撮を重ね、想像を絶する闇取引の奥底へと踏み込んでいく様は正真正銘の“リアル”スパイ活動の記録。あらゆるフィクションを超えた命がけの潜入調査となっている。
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監督は、日本でも『誰がハマーショルドを殺したか』(19)で話題を呼んだマッツ・ブリュガー。映画デビュー作『ザ・レッド・チャペル』(09)で北朝鮮の怒りを買い、入国禁止となった因縁を持つ北欧の鬼才が、ウルリクらが撮影した映像素材にナレーションや撮り下ろしのインタビューシーンを新たに加え、全世界が騒然とするスパイ・ドキュメンタリーが完成した。
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なお、本作は2020年秋に英国BBCと北欧のテレビ局、さらに今年2月には「潜入10年 北朝鮮・武器ビジネスの闇」という題名でNHK-BSにて放送され、大きな反響を呼んだ。あまりにもショッキングな内容ゆえに「本当にドキュメンタリーなのか?」という声が各方面から上がったものの、専門家による映像の鑑定を行ったブリュガー監督は「100%ノンフィクション」と言明。すでに国連とEUも本作の告発に関心を示しており、今後新たな国際調査へと発展していく可能性もあるという。
本作はTV放送版に含まれなかった未公開シーンを追加した再編版の上映となる。
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『THE MOLE(ザ・モール)』は10月15日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次公開。