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「女性たちの語られざる旅の物語」を作りたい
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「アイルランドで中絶ができなかったために亡くなった女性の記事を読んで、本当に落ち込みました。そこからインターネットでアイルランドとその中絶法について、妊娠中絶が違法とされている現状を学んだのです。そして私は思いました。これこそ私が作りたい映画だと。女性たちの語られざる旅の物語です」とヒットマン監督。
このアイルランドでのニュースがきっかけとなり、『17歳の瞳に映る世界』の製作に至ったという。しかし、その舞台に選んだのはアイルランドではなく、ペンシルベニアとニューヨークだった。「もしこの物語がアメリカで起こったとしたら? と考えました。(舞台をニューヨークに決めた理由は)中絶手術のためにニューヨークにやってきても、手術が高額なため、どこにも泊まることができず、夜にベンチで寝なければならない女性の記事を読んだからです」と語る。
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その後、自身が妊娠。『ブルックリンの片隅で』(2017年/日本未公開)の製作・公開を経て、トランプ大統領就任時(2017年)にはウィメンズマーチ(女性の権利向上をめざす運動)にも参加したというヒットマン監督は、自らが経験したことをもとに企画を練り直したという。
「私がこの登場人物だったら、この窮地にどこに行くだろうか」
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劇中ではオータムが妊娠に気づくも、誰が父親なのかはっきりと明示せず、彼女の住むペンシルベニア州の町では中絶ができない、ということのみが描かれる。そんなオータムと彼女を支えるいとこのスカイラーが次に向かうところは、親の同意なしに手術を受けられるクリニックがあるニューヨークだ。
ヒットマン監督は「彼女たちがニューヨークの地下鉄の駅で眠る日を含めた数日間の旅が始まります。地下鉄で出会う男、何度も繰り返されるクリニックへの訪問、下心のある男との時間に耐えなければいけなくなるのです」と、女性であるというだけで受ける理不尽な出来事について思いをめぐらせる。
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さらに「多くの病院と全米家族計画連盟と、個人経営のクリニックにも行きました」と、綿密な取材を行ったという監督。その中のひとつ、チョイシズ女性医療センターでは、本施設に勤務しているケリー・チャップマンに出会った。監督は、彼女からかけられたある言葉が「私の胸を刺した」という。その内容とは、「中絶だけの問題ではない。家の中で起こっている秘密は、20分(診察時間)では解決できない。妊娠、セクシュアルヘルス、パートナーによる暴力、暴力から安全を確保する方法、すべてが絡み合っている」という事実だった。
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「映画が信頼できるものであってほしい」という思いを持つ監督は、「主人公のリアクションに対し、見る人たちも自ら選択するような感覚を持ってもらいたかった」と、そのエピソードを物語に取り入れることにし、実際にメディカル・センターに勤めているケリーを映画に登場させた。「中絶手術のプロセスを完全に描く映画を作っているわけではなく、その過程を通して登場人物が感じていることを描きたかった。だから私は彼女を映画にカウンセラー役として、キャスティングすることにしました」と、その理由を明かす。
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最後に、エンディングについて「私はこの映画が『#MeToo運動』や、前進しているけれど多くの女性が非力さを感じている問題と繋がっていると思っています。この映画のエンディングは複雑で、より現実的です」と監督。
「オータムが家に向かうバスの中、観客も安らぎを感じ、彼女もついに眠りにつく。しかし、同時に、彼女はすべての問題が待つ家へと向かってもいます。私は『17歳の瞳に映る世界』のエンディングが別の物語の始まりだと感じています」と語り、これからも彼女たちの茨のような旅が続いていくことを示唆している。
『17歳の瞳に映る世界』は7月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。