「市船soul」は、同校運動部の試合中に演奏されると勢いがつき「ソウルが流れると点が入る!」「市船のチャンステーマ」など、市船を勝利へ導く神応援曲としてTwitter上で話題に。
本作は、そんな「市船soul」を作曲し、がんのため20歳でこの世を去った浅野大義さんと、市船吹奏楽部の絆が生んだ奇跡を辿った原作「20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド」を映画化。生前、市船の吹奏楽部員だった彼は、野球部を応援する曲を作りたいと「市船soul」を作曲。そして完成すると、その楽曲は運動部員たち、一緒に青春を過ごした吹奏楽部の仲間たちを勇気づけ、さらには病にかかった彼自身にも生きる力を与えた曲となった。

「市船soul」の作曲を一番近くで見守り、大義さんの青春に大きな影響を与えたのが吹奏楽部顧問・高橋健一先生の存在。高橋先生は大義さんの告別式で「大義のために演奏しよう」と声をかけ、164名もの市船吹奏楽部OBが集まり、「市船soul」を演奏して大義さんを送り出した。

大義さんの物語は、本作の脚本を担当した中井由梨子により2018年に書籍化され、「電車で読んではいけない本」として各レビューサイトで“感動”“号泣”のコメントが殺到。また「NEWS ポストセブン」で記事が掲載されると、「Yahoo!ニュース」に転載され、その後テレビ朝日「報道ステーション」でも特集されるなどメディアで大きな話題を集めた。
神尾楓珠、トロンボーンとピアノに挑戦

主人公・浅野大義さんを演じるのは、2021年ネクストブレイク俳優と呼び声が高い神尾楓珠。神尾さんは本作で初めて、大義さんが吹奏楽部で担当していたトロンボーン、そしてピアノ演奏にも挑戦する。また実際に、市船吹奏楽部の演奏も見学し、スクリーンで大義さんの人生を生きる上での役作りに反映させた。
大義さんの恩師・高橋健一先生を演じるのは、昨年俳優生活40周年を迎え、これまで100本以上の映画に出演してきた日本を代表する名優・佐藤浩市。佐藤さんは、初の吹奏楽部顧問を演じる上で、実際に高橋先生から指揮法を学び、また神尾さん同様、市船吹奏楽部の演奏と合唱を見学。彼らの音楽を聴いて、大好きな音楽と共に生き切った大義さんの人生を先生の目線で伝えていく。
神尾さんは、「最初、実話ということを知らずに脚本を読ませていただいたのですが、映画みたいな、すごい青春だなと感じました」とコメント。大野さんについて「彼は周りからの人望が厚く、とても愛されていたんだなと感じ、映画ではその魅力や、そして彼が残してくれた生き様が、きちんと伝わる様に演じられたら」と意気込みを語った。

また、佐藤さんは「市船・吹奏楽部の生徒たちが演奏しているのを見させていただき、昨今、このコロナで演奏できる場、表現できる場が失われた生徒たちが、“何か”を伝えようと、とても生き生きと演奏していました」とふり返る。「その姿を見て、この映画で、そして浅野大義さんの人生を通して、自分自身もこの子たちのその“何か”を伝えたいと思います」とコメントを寄せている。
本作の監督は、テレビ朝日で演出家・プロデューサーとして活躍した秋山純。テレ朝時代の代表作として「特命係長 只野仁」シリーズや佐藤さん主演の「陽はまた昇る」、「就活家族~きっと、うまくいく~」などを担当、独立後は映像制作会社を設立している。
「彼の生きた証を多くの人に知ってもらいたい。その想いは、たくさんの仲間、素晴らしい俳優陣へと縁を繋ぎ、映画として実を結びました。大義くんが我々を選んでくれたのだと信じています」と秋山監督は語る。
脚本は、本作の原作の著者でもある中井由梨子。2017年、朝日新聞の記事をきっかけに、大義さんの関係者へ取材を行い、2018年に著作を上梓。今作では脚本を担当し、映画として何を伝えたいか、改めて大義さんと向き合ったという。
「浅野大義、という音楽好きの青年が20歳の若さで亡くなった。その事実の中に、想像もできないような奇跡が、たくさんの人々の絆が、溢れ出す想いがあります」と語る中井さんは、「命の輝きを感じてください」とコメント。
大義さんが残した「市船soul」は市船吹奏楽部の後輩たちに受け継がれ、高校野球のスタンドなどでいまも演奏され続けている。
『20歳のソウル』は2022年、全国にて公開。