誰もが持っているストーリー「形にするということを恐れずに」
――これまでの経験や現在のお仕事を通じて、これからの日本の映画界にいま、何が必要だと感じてらっしゃいますか?
やはり日本ではクリエイターが限られているという現状があると思います。国が映画制作を助成するという仕組みはありますが、いつお金が支払われるのか? というタイミングやシステムとして、現状ではすでに実績のあるクリエイターの方々が映画を作って、それに対してその後、助成金が支払われるという運用の仕方になっていることが多いんですね。
僕自身の経験を踏まえて、映画制作のつらい部分は2つあると思っていて、それは「作る」過程と「見せる」過程だと思っています。たとえ映画を苦労して作ったとしても、どのようにしてお客さんに届けるか? という部分が非常に難しくて、単館系の小劇場と交渉して何とかそこで上映して…ということが多いと思いますが、一方でインターネットの技術などを介することで、多くの人に見せられるチャンスは増えてきたのかなと思います。
それによって、短編映画が長編映画の登竜門、いわゆるデモテープのような存在としてではなく、短編映画そのものがコンテンツになりうる時代になってきたのかなと個人的に思っています。どんな機材、レベルであれ、作ったものを世に出して評価を受け、時には批判もされながら、より良いものを作っていく――そうした流れが日本中で広まればいいなと思っています。
――今後、中臺さん自身は映画業界でどのようなことを実現したいと考えていらっしゃいますか?
いま、映画は2つの方向に進んでいると個人的に感じています。ひとつは、より深い体験ができるということ――画質や音響がよりよくなっていき、よりイマーシブ(没入体験的)になっていくと思います。一方で、映画自体がコンテンツの一部になっている動きがあると感じていて、ヒーロー映画をコスプレをして観に行ったり、映画そのものの前後にあるいろんなものを含めて、体験として楽しめるようになっているなと思います。
そのどちらの方向性も素晴らしいものだと思っているので、もし個人で作品を作れる機会があれば、イマーシブな映像を作ってみたいという思いもありますし、一方で映画を含めた様々な体験を含めて「映画を楽しむ」ということを提供できるものを作れたらと思っています。
――最後に映画業界を志す人たちにメッセージをお願いします。
映画って切り口はいろいろあると思いますが、でも根本にあるのはストーリーテリングにあると思っています。そして、そのストーリーテリングを支えるのが技術やテクノロジーなのではないかと。
社会問題にせよ、自分が伝えたいことにせよ、もしかしたら日常の些細な幸せにせよ、その人しか持っていないストーリーを必ず誰もが持っていると思うので、それを形にするということを恐れずに続けてほしいと思います。その人しか持っていないストーリーは、その人が自信を持って発信しない限り、一生外に出てこないので、そういうものを表現するということを続けてほしいと思います。
また、SSFF & ASIAとソニーモバイルが企画したCreators’ Junction partnered with Xperia™でも冒頭少しお話させて頂きました。河瀬直美監督と常田大希さんのトップクリエイターのトークセッションをお楽しみいただければと思います。
「Creators’ Junction partnered with XperiaTM」は9月28日(月)20時スタート予定。
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