アイヴァンと仲間たちを通じて、コロナ禍に友情のすばらしさや“ふるさと”と呼べる場所の大切さを届ける本作で、プードルのスニッカーズの声をつとめた英国のベテラン俳優ヘレン・ミレンと、犬のボブの声をつとめた『ジュマンジ/ネクスト・レベル』のダニー・デヴィート、アイヴァンの“親代わり”マックを演じた「ブレイキング・バッド」『THE UPSIDE/最強のふたり』のブライアン・クランストン、そしてテア・シャーロック監督とのリモートインタビューが実現した。
ヘレン・ミレン「楽しい仕事になる」と予感
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――この映画にかかわりたいと思ったのはなぜですか?
ヘレン:コンセプトが好きでした。それに、監督のテア・シャーロックが舞台出身というのも魅力でした。私も舞台をたっぷりやってきています。彼女と一緒に仕事をしたことはありませんでしたが、彼女が誰かは知っていました。
監督が女性で、しかも舞台出身というところに、すごく惹かれたんです。その上、共演者がものすごく豪華なんですから。ダニー・デヴィート、サム・ロックウェル、アンジェリーナ・ジョリー、ブライアン・クランストンといった人々の中に、私も入れるというんですよ。小さな役とはいえ、それはすごく大きな光栄。楽しい仕事になるだろうという予感がしましたし、なにせ、メイクも不要なんですから(笑)。
――舞台、映画、ドラマなどを幅広く出演してきたあなたにとって、CG作品の映画に出るというのは、どんな新鮮な体験をくれるのでしょうか?
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ヘレン:CGの作品は、私にとってすごく新しい体験。でも、決して簡単ではありません。体を使えないのですから。表現は、全部声でやらないといけません。それは、かなり難しいことなんです。でも、幸運なことに、私はダニー・デヴィートと一緒にレコーディングすることができました。
彼と同じ部屋に入って、一緒にシーンをやったんです。それは大きな助けになりました。ダニーはこういった仕事の経験が豊かで、私にアドバイスをくれました。もちろん、監督も。この仕事は、思ったよりもさらに楽しかったですね。これからももっとやりたいと思います。長い期間の間に、ちょっとやったらしばらくなくて、また呼ばれるという感じでしたし。
――今年、私たちはみんな大きな変化に直面しました。この異常事態の中で、人は新しい生き方を模索しています。あなたは何か新しい発見をしましたか?
ヘレン:たしかに今は、とてもクレイジーな時。でも、私の普段の生活は、普通の人から見たら、とても奇妙なものなんです。常に荷物をまとめて飛行機で次の場所に移動する。その繰り返し。この30年、同じベッドに4か月以上続けて寝たことはありません。いつも仕事をして、移動をして、仕事をして、移動をして。だから、私にしてみたら、初めて普通の生活をすることができたんです。
家で夫とずっと一緒にいられました。ロックダウンが始まった時、私はちょうど、新しい歯磨き粉を買ったところでした。その歯磨き粉を使い切って、こんなことは人生で初めてだと気付きました。同じ歯磨き粉だけを途切れることなく使って、使い終わったのは初めてなんです。
普段は、ある歯磨き粉を使っていて、次の場所に移動したら新しい歯磨き粉になって、という感じ。1本だけを最初から最後まで途切れることなく使ったというのは、初めて。つまり、今の私の生活は普通の人みたいなんです。普通の人が普通と思う生活をできるのは、素敵なことです。
ダニー・デヴィート「現代のテクノロジーが、僕たちを一緒にしてくれた」
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――この映画、素晴らしかったです。あなたのキャラクター、ボブが大好きでした。出演依頼があった時、今作のどこに惹かれたのですか?
ダニー:僕は、監督のテア・シャーロックと、ロンドンの舞台のプロジェクトで一緒に仕事をしたことが一度あるんです。それで、彼女が僕に脚本を送ってきました。マイク・ホワイトの脚本をね。それで脚本を読んだんです。
それから、キャサリン・アップルゲイトの原作「The One and Only Ivan」(日本版タイトル:世界一幸せなゴリラ、イバン)も読みました。それはヤングアダルトのための本なんです。僕は、ストーリーが大好きでしたし、そのテーマ、自由のテーマが大好きでした。実話に基づいていて、本当に感動的なんですよ。
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キャラクターのボブに関してだけど、僕はボブにとても親しみを感じたんです。なぜなら、人生において、僕はとても自由に感じているから。僕は、好きなように行ったり来たりします。犬のボブも、行ったり来たり出来て、あの住処から出たり入ったり出来る。彼は、床にあるピザを一切れ食べたり、そこに置いてあるホットドッグやパンくずを食べたりも出来る。でも、彼が見つけることになるのは、彼の人生においてとても重要なこと、もっとも重要なことで、それは友情なんです。
そして、彼はそれをアイヴァンと見つけるんですよ。アイヴァンだけじゃなくて、ヘレン・ミレンのキャラクター、スニッカーズともね。僕は、サム・ロックウェルと一緒に仕事が出来るという素晴らしい機会を持てましたし、僕がとても大切に思っているキャラクターを経験することが出来たんです。
――アイヴァンとボブ、サムとあなたの相性が素晴らしかったですが、それをどのようにして作っていったのでしょうか?
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ダニー:テアがとても自由にやらせてくれたおかげなんです。監督のテアは、僕たちのパフォーマンスに関して、とても自由でした。たくさん自由に出来る余地を与えてくれました。そしてまた、そういう(自由な)スタイルで出来たということで、そのスタイルが、僕たち2人が一緒にちょっとしたやりとりを思いつくのをかなり助けてくれました。なぜなら、僕たちはお互いを見ることが出来たからです。
ただ脚本に書かれたセリフを読むだけじゃなくて、2人で一緒に出来るというぜいたくなことが出来たんです。1人じゃ出来ない。いや、1人でも出来ることだけど、誰かと一緒にやる方が、もっとずっと楽しめるんですよ。
――ヘレン・ミレンはいかがでしたか?
ダニー:素晴らしかったですよ。サムと僕の時と同じような感じでした。彼女と話すことが出来てとても素敵でした。僕たちのシーンを、直接一緒に録音できたんです。
――アンジーと一緒に仕事をしてどうでしたか?
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ダニー:彼女は、とても、とても優しいんです。とてもナイスでした。たくさん長距離のセッションをやったんです。僕がロンドンにいて、彼女がロサンゼルスにいたりしました(笑)。でも、良かったですよ。現代のテクノロジーが、僕たちを一緒にしてくれたんです。
ブライアン・クランストン「答えを提供しない社会問題を提起している」
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――まず、あなたが演じたキャラクターについて話してくださいますか?
ブライアン:イエス。(この作品は)実話に基づいています。『ゴリラのアイヴァン』で、僕はアイヴァンの父親であるマックというキャラクターを演じています。実際のところ(笑)、彼は、赤ちゃんのローランド・ゴリラを引き取って、自分の息子のように愛しているんです。
マックは、動物園とかに(彼を)渡すかわりに、自分のそばに彼を置いておきたかったんです。それで、彼はショッピングモールを借りて、このカーニバルのような、サーカスを作りました。そしてアイヴァンは、そこでのスターとなります。それは本当のことなんですよ。
僕たちは映画を使って、動物たちを理解するために、いろんな人間の性質を動物たちに与えることに力を注ぎました。彼らが(観客が)僕たちのことを理解してくれるといいんですが。それと、こういうサーカスを持つことによるジレンマやお金の問題、そして、何をするのが正しいのか? ということをね。
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僕がこの映画が大好きなのは、答えを提供しないこういう社会問題を提起しているから。それを決めるのは観客に任せています。動物たちを捕われの身にするのは、僕たちにとって正しいことなのか? それとも、動物たちはいつも自由でいるべきなのか? どちら側にも言い分はあります。そして、願わくば、もし、子供たちが両親にそういうことを尋ねて、話し合うことになれば、僕たちは成功したことになります。それは良いことだと思います。
――あなたには、動物たちとのシーンがたくさんありました。撮影する時、動物たちはいなかったですよね? そうしたシーンをやるチャレンジについて話してくださいますか?
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ブライアン:それはチャレンジですよ。映画に出てくる10匹の動物の、どれもが“リアル”じゃないんです。みんなCGの動物です。だから、僕は、グリーンのスーツを着てパペットを持った人とか、グリーンのコスチュームを着た人とかを見ていたんです。グリーンがついた大きなメタルのフレームを、(演じる際の目線になるように)男の人たちが動かしていて、それがある時点で(CGで作った)大きな象になるんです。
それと、ゴリラのふりをして背中をかがめている男の人とかがいて、僕は、彼らを見ながら、想像力を使っていたんです。でも、本当のところ、役者たちは想像力を使うように訓練されていますし、それを使うように奨励されています。だから、僕がやらないといけなかったことは、これらの動物が本物だと想像するだけでした。そうすれば、彼らはそこに存在するんですよ。
――日本の観客にメッセージをいただけますか?
ブライアン:みなさんが『ゴリラのアイヴァン』を楽しんでくださることを願っています。もうすぐディズニープラスで始まります。サンキュー。みなさんとお話し出来て良かったです。どうかお元気で、安全で健康でいてくださいね。
アンジーは「素晴らしい共同製作者」
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――アンジーは、この作品に出演しているだけではなく、プロデューサーの1人でもあります。彼女とはどういうふうにコラボしたのですか? どういうことを話し合いましたか?
テア:アンジーとはこの映画の初期の段階で会いました。プロデューサーとして、そして女優として会いました。私たちはたくさん話しました。彼女は素晴らしい共同製作者です。私が必要とする時には、いつもそこにいてくれました。彼女は、両方のクリエイティブ・プロセスにとても関わっていたんです。脚本を練ることや、キャスティングのプロセスにおける不可欠な部分でした。
そしてある意味、彼女は、全体を通して見事なプロデューサーでした。でも、私たちのコラボで、私がある意味、もっとも楽しんだのは、彼女がステラとして演じるシーンをやった時でした。彼女はただ女優になれて、私はただ監督になれて、私たちは、彼女のキャラクターが歩く正しい道を見つけようとしたのです。彼女は本当に素晴らしいですね。とても、とてもオープンで、とても、とても仕事しやすいんです。
――この映画は、技術的にとてもチャレンジングだったと思います。監督として、このストーリーを語るのに、何がもっとも重要なことでしたか?
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テア:もっとも重要なことは、常に原作本のスピリット(精神)を、(仕事)部屋の中でもっとも重要なこととして維持することでした。ストーリーテリングにおいていつもね。
私は、本(原作)の中にある完璧だと思えるトーンを捉えたかったんです。それは、子供たちとヤングアダルトのための本なんです。でも、決して上から目線ではないんですよ。とてもわかりやすい。でも、洗練されていて、勇敢で、大きな問題を扱うことを恐れない。そういうことすべての理由で、大人や両親、親じゃない人々にとってもとても説得力があるんです。
私は、みんなが楽しめる映画だというところが大好きでした。みんなのためのストーリーで、みんなのための映画なのです。そしてまた、私が常に心に留めていたのは、これが本を基にしたものであるだけでなく、その本は実話に基づいている、ということでした。それは、このストーリーをとてもユニークで、とてもスペシャルなものにしています。そしてそのことは、私たちみんなが(映画作りにおける)すべての選択にとても気をつけていた、ということを意味しています。
――日本の観客にメッセージをいただけますか?
テア:ハロー、日本の皆さん。私の名前はテアです。私は『ゴリラのアイヴァン』の監督です。これは、とてもスペシャルな映画で、私の心の中でとても特別な場所を占めています。特に、(この映画の)動物たちは、とても入念に(手間暇かけて)作られたキャラクターたちです。みなさんがこの映画を楽しんでくれると嬉しいです。
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「Disney+(ディズニープラス)」公式サイト
『ゴリラのアイヴァン』は9月11日(金)よりディズニープラスで配信中。
<提供:ウォルト・ディズニー・ジャパン>