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ボーデン監督、“完璧じゃない”「彼女が大好き」
「私たちは彼女のことが大好き」と語るのは、マーベル映画史上初の女性監督に抜擢されたアンナ・ボーデン。ボーデン監督の言う「彼女」とは、ブリー・ラーソン演じるキャプテン・マーベルのことだ。ただし、『キャプテン・マーベル』に登場する彼女はまだヒーローとして覚醒する前。記憶を失った彼女は“ヴァース”の名で呼ばれ、遥か宇宙にあるクリー帝国の戦士として戦っている。
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「宇宙の戦士であるヴァースは、まっすぐで、ひたむき。でも、決して完璧なヒーローというわけじゃない。ユーモアがあり、とても有能でもあるけれど、欠点を持ち合わせている。軽率に行動することもあるし、実際より物事を分かった気でいる。そんな彼女が劇中で描かれる旅を通して、自分自身や周囲の世界について知っていく。彼女は何者であるべきなのか? どんな人間になり得るのか? 自分の欠点や間違いと向き合わなければいけない彼女の心の旅を描くことは、すごく興奮させられることだった」。
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そんなヴァースと密接にかかわっているのが、クリー帝国のエリート部隊“スターフォース”の司令官だ。ジュード・ロウ演じる司令官が記憶喪失状態の彼女を助け、優秀な戦士に育てたという。「司令官とヴァースは、いわゆる師弟関係ですね」と再びボーデン監督。
「彼らはプラトニックなところで、互いを思いやっているの。ヴァースは司令官の一番弟子で、司令官にとっての彼女は最高の生徒。戦士たちの中で最も有能なヴァースの力を、彼は最大限に引き出したいと思っている」。
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90年代カルチャー&マーベル的ユーモアが満載
しかし、ヴァースは敵対するスクラル人との戦いの中で不測の事態に見舞われ、90年代半ばの地球へ不時着。その場所がアメリカの大手レンタルビデオチェーン店だった“ブロックバスター”であることは、予告編を見れば分かる。「実は95年にブロックバスターで働いていたことがあってね。あのシーンには、個人的な体験を持ち込んでいるんだ」と明かすのは、ボーデンと二人三脚で監督を務めたライアン・フレックだ。
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「すごく楽しい撮影だったよ。撮影現場に足を踏み入れたとき、タイムマシーンで過去に来た気分になった。僕が働いていた当時と全く同じ光景だったからね。ちなみに、不時着したヴァースは『トゥルーライズ』の立て看板を破壊するけど、シュワルツェネッガーの頭が吹き飛ばされたのは全くの偶然で何の意味もないよ(笑)。僕らは『トゥルーライズ』が大好きだし、ジェームズ・キャメロンを尊敬している。『キャプテン・マーベル』には『ターミネーター2』から影響を受けたシーンもあるくらいだからね」。
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そのほかにも、本編には90年代カルチャーにまつわる描写が満載の様子。さらに、90年代と言えば、後に国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.の長官となるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が、まだ一エージェントであることも忘れてはならない。地球に落ちたヴァースと若きフューリーの“遭遇”は、かなりユーモラスだ。フレック監督が「僕らはマーベル作品の中で描かれているユーモアの大ファンなんだ」と語る。
「それは、僕らが初めてマーベル側と話をしたときにも伝えたことだ。作品自体がシリアスになり過ぎていないところが好きだし、作品を作るうえではそれを大切にしたいとね。だから、例えば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に通ずるユーモアや『アイアンマン』で見られたようなユーモアが『キャプテン・マーベル』にはある。『マイティ・ソー バトルロイヤル』を思わせるユーモアが投げ込まれている箇所もあるよ」。
マーベル初の女性監督「若い世代の自信と希望に」
主人公を巡るミステリーあり、90年代のカルチャー描写あり、マーベル作品ならではのユーモアあり。ますます、本編への期待が高まってくる。プレッシャーも多いであろう中、ボーデン監督はマーベル初の女性監督であること、その立場でマーベル初の女性単独ヒーロー映画を手掛けることにどう向き合っているのだろうか。
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「もちろん誇りに思っているし、これほど勇気づけられる力を持った女性キャラクターを存分に描ける状況を嬉しく感じています。ただ、今後は“女性であること”をニュースで取り上げる価値がなくなるくらいになればいいとも思う。現時点では、カメラの裏側には女性たちがいること、その現実を皆さんに知らせることが大切だということも分かっているけど。女性がカメラの裏側でもっと活躍することが若い世代の自信と希望になり、自分たちの物語を伝えたいと思えるようになればいい。自分にもこういったことができるのだとね。いまはそう願っています」。
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