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■『ムーンライト』『アンダー・ザ・シルバーレイク』の衣装デザイナーが担当
本作の舞台は、70年代ニューヨークのハーレム、イーストヴィレッジ、そしてウエストヴィレッジ。ジェンキンス監督の前作『ムーンライト』や、昨年10月に公開されて日本でも話題になった『アンダー・ザ・シルバーレイク』などの衣装も手掛けたキャロライン・エスリン=シェイファーは、撮影の準備として各キャラクターのイメージボードを作り、ジェンキンス監督が脚本に描いたキャラクター像の可視化を計ったという。

今作では、衣装がキャラクターの姿を伝えるのに大きな役割を果たすと考えていた彼女は、劇中の衣装を仕上げるにあたり「60年代後半~70年代初頭の雰囲気を掴むのにゴードン・パークス、ジャック・ガラファロー、ポール・フスコといった写真家の作品が役立った」と説明する。
衣装やメイクを担当するチーム全員でそのイメージを共有し、キャラクターが生きる環境や性格など、原作(ジェイムズ・ボールドウィン著)に描かれた情報なども基にしながら徹底的に考察。その人物像にあったスタイルを、シチュエーションによっても変えている。

■『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーンを参考に
例えば、キキ・レイン演じるヒロインのティッシュは、普段はカールされた髪をひとつにまとめ、少しワイルドな印象も与える美しさだが、デパートの香水売り場でのお仕事スタイルは、洗練された上品なルックに。美しい女性像の代表格であり、70年代に生きるティッシュも間違いなく憧れていたであろう『ティファニーで朝食を』(61)のオードリー・ヘプバーンを参考にしたという。

さらに、原作に描かれている通り、ティッシュはデパートで唯一の黒人女性でもある。差別や偏見がより激しかった時代、経済的な事情から「きっとティッシュは、通勤にはお気に入りのドレスをローテーションして着回しているだろう」と考えを巡らせながら、キャロラインたちは衣装やヘアスタイル、メイクを完成させていった。白のケープを淡い水色や黄色の服に羽織ったデートスタイルも、とても可愛らしく、純真なキャラクター像を映し出している。

そのほか、アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされているレジーナ・キング演じる、ティッシュの母シャロンがプエルトリコを訪れるときは、眩しい南米の日差しに映える鮮やかな緑色を基調とした衣装が採用されている。

また、ティッシュの恋人ファニーの家族は仕立ての良さそうなジャケットやワンピースを身にまとい、比較的リッチな“ハイクラス”に属すことが見て取れる。

細部にわたり、原作に敬意を払ってこだわり抜かれた衣装やヘアメイクは、前作『ムーンライト』からより進化した映像美とスケールアップした世界観を作り出すのに欠かせない重要な役割を担っているといえそうだ。

『ビール・ストリートの恋人たち』は2月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。
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