クレール・ドゥニ監督(仏)『Dark Glasses』 フィリップ・ガレル監督(仏)『Lover For A Day』 ブリューノ・デュモン監督(仏)『Jeanette, the Childhood of Joan of Arc』 アベル・フェラーラ監督(米)『Alive in France』 シャルナス・バルタス監督(リトアニア)『Frost』 レオナルド・ディ・コスタンツィオ監督(伊)『The Intruder』 アモス・ギタイ監督(イスラエル)『West of Jordan River (Field Diary Revisited)』 ショーン・ベイカー監督(米)『The Florida Project』 ジョナス・カルピニャーノ監督(伊)『A Ciambra』 ペドロ・ピンホ監督(ポルトガル)『Nothing Factory』 キャリー・マーニオン監督&ジョナサン・マイロット監督(米)『Bushwick』 モーリー・スリヤ監督(インドネシア)『Marlina the Murderer in Four Acts』 ヴラディミール・ドゥ・フォントネイ監督(仏)『Mobile Home』 キャリーヌ・タルディユー監督(仏)『Just To Be Sure』 ジェレミー・ジャスパー監督(米)『Patti Cake$』 クロエ・チャオ監督(中)『The Rider』 ロベルト・デ・パオリス監督(伊)『Cuori Puri』 ルンガノ・ニヨニ監督(イギリス)『I Am Not A Witch』 ナタリア・サンタ監督(コロンビア)『La Defensa del Dragon』 ソニア・クロンルンド監督(仏)『Nothingwood』
フィリップ・ガレル監督は1969年の第1回「監督週間」に参加していて(作品は『処女の寝台』。ちなみにこの年は大島渚の『絞死刑』も出品されている)、以来幾度となく同部門に出品しています。新作『Lover For a Day』は、男と別れた20代の女性が実家に帰ると、父が自分の同年代の女と付き合っていることを知ってしまう…、という物語。主演は娘のエステル・ガレルで、父親役にエリック・カラヴァカ。ガレルだけに実話なのだろうな、とつい考えてしまいますが、それはまあどうでもよくて、2017年になってもガレルの新作が見られることを心から喜びたいと思います。
そんなデュモンの新作『Jeanette, the Childhood of Joan of Arc』は、なんとミュージカル。今年は意外な人がミュージカルを作るのが流行っているみたいで、レオス・カラックスも新作はミュージカルだと聞いているし、『ラ・ラ・ランド』の影響かしらん。って、そんなわけはないですが、ともかくデュモンは15世紀半ばを舞台にしたジャンヌ・ダルクの少女時代を、エレクトロ・ポップ・ロックに乗せて描くらしいです。
アメリカのアベル・フェラーラ監督も「監督週間」に参加です。新作『Alive in France』は、フェラーラ自身のライブ・ツアーを追ったドキュメンタリーとのこと。アベル・フェラーラがフランスでライブ? と僕もいまいち理解できていないのですが、理解したかったら作品を見ろ、ということですね。
リトアニアのシャルナス・バルタス監督は10本以上の作品を手掛けていて、映画祭出品歴も多く、リトアニアでは大きい存在です。彼の過去作のうち、僕は『Eastern Drift』(2010)をベルリンの「フォーラム部門」、『Peace To Us In Our Dreams』(2015)をカンヌ「監督週間」で見ていますが、リニアな物語映画ではなく、抽象度の高い作家映画を作る人という印象があります。
そして、イスラエルのアモス・ギタイ監督。『West Of The Jordan River (Field Diary Visited)』のタイトルから伺えるように、今作はアモス・ギタイが『フィールド・ダイヤリー』(1982)以来、35年振りにパレスチナ占領地域のヨルダン川西岸を訪れた様子を収めたドキュメンタリーです。軍、人権活動家、ジャーナリスト、パレスチナ住民、そしてユダヤ人入植者たちの、終わることのない相関関係の現状を描いているとのこと。
『フィクション』(2008/昨年TIFFで上映)、『愛を語るときに、語らないこと』(2013/ロッテルダム映画祭で受賞、TIFFでも上映)に続き、今作『Marlina the Murderer in Four Acts』が長編3本目です。インドネシアの離島を舞台に、ならず者たちに襲われてしまった女性の運命が描かれる物語。過去2作にはなかったバイオレントな面があるのかなと想像させつつ、彼女特有のファンタジー的浮遊感も期待できそうな雰囲気です。映画監督は3本目が本当の勝負だと誰かが言っていましたが、アジアの星モーリーの勝負に、僕も気合いを入れて立ち会うつもりです。
こちらは正真正銘のフランス映画で、出品作『Just to be sure』が3本目の長編監督作となるキャリーヌ・タルディユー監督は、いままで軽妙でウェルメイドなドラマを作ってきています。今回もフィールグットなコメディ・ドラマのようで、主演にフランソワ・ダミアンとセシル・ドゥ・フランス。芸達者なフランソワ・ダミアンの演技は毎回見ていて本当に楽しいので、今作はカンヌにおける一服の清涼剤になるかもしれません。
中国生まれ英米育ちのクロエ・チャオ監督は、2015年にアメリカで製作した『Songs My Brothers Taught Me』で長編デビュー、同年の「監督週間」に選ばれています。これはアメリカの中央部のインディオのコミュニティーを舞台にし、広大な風景の中でインディオ青年とその家族のドラマが淡々と進行し、詩情溢れる美しい作品でした。大きな動きはないものの、作品のムードがとても良く、監督のセンスが感じられました。
ルンガノ・ニヨニ監督はザンビア系のイギリス(ウェールズ)人女性で、短編が数多くの映画祭で上映された実績を持ち、満を持して実質長編1本目となる今作『I Am Not A Witch』を作っています。ザンビアを舞台に、9歳の少女が魔女の嫌疑をかけられ、矯正キャンプに送られる物語。フィクションではありますが、アフリカのいくつかの地域における魔女狩りは現在進行形の深刻な問題であるという事実は近年(特に映画を通じて)知られるようになっています。
そんなコロンビアの勢いを引き継いでいるかどうか、ナタリア・サンタ監督は『La Defensa Del Dragon』が長編デビュー作です。ボゴタの下町で旧式のチェス・クラブにたむろする3人の中年男性を描く、という紹介を読んだだけで興奮します。くたびれた男たちがかつては華やかだったであろうクラブでチェス盤に向かっている…。わくわくしますね。こういう映画なのか全然分かりませんが、コロンビアは映画祭関係者をいま一番興奮させる国なのです。