世界初の長編フルCGアニメーション『トイ・ストーリー』から20周年を記念して贈るディズニー/ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド』が大ヒット公開中だ。感情たちが主人公の本作と同時上映されている短編映画『南の島のラブソング』。シネマカフェでは『南の島のラブソング』の監督を務めたジェームズ・マーフィーにインタビューを敢行。どういうふうに映画を作ったのか、作品の背後にあるインスピレーションについても語ってくれた。本作の主人公は、何百万年にもわたり噴火と浸食を繰り返し、形成された巨大な火山 “ウク”。ひとりぼっちで長い時間を過ごす彼は、愛する人と一緒になれる日をずっと願いながら、日々を送っていた――。実写に勝るとも劣らない雄大な海や空の描写や、“ひとりぼっちの火山”が何百万年にもわたって奏でる、少し切ないラブソングなど、目と耳で美しい情景を楽しむことができる本作。ジェームズ監督は「僕がハワイとハワイの島々、ハワイの音楽に対して持っているものすごい愛からできた作品で、この文化やこの場所に対して持っている僕の感情を、この映画で捉えようとしたんだ」と語りながら、本編を見せてくれた。「結婚したとき、妻と僕はビッグ・アイランド(ハワイ島)にハネムーンに行ったのさ。それですっかりはまってしまって、それ以来、トロピカル・アイランドや活火山、ハワイ音楽に恋してしまったんだ」と熱弁する姿からハワイへの愛がひしひしと伝わる。その後、家族を連れてビッグ・アイランドへ行ったと語るジェームズ監督だが、そのときに信じられない発見をしたという。「ビッグ・アイランドを作っている5つの火山のジオラマに出会ったんだ。そこには“ロイヒ”というサインが、海底に書いてあるのが見えたんだよ。その“ロイヒ”というのは、ビッグ・アイランドの海岸のすぐ近くの海底にある火山で、1万年から10万年の間に、表面に到達して、ビッグ・アイランドの一部になるとみられていることが分かった。僕は、この壮大なスケールにとても魅了されたんだ」。それからリサーチを続けた結果、一つの火山の一生は約8,500万年にわたることが分かったという。ジェームズ監督が火山に魅了されている間、妹が結婚することになり、突然ひらめいたのだという。「もし火山が、人間のように、一生をかけて愛を探していたら? と思ったんだ。次の8か月間、僕はストーリーの展開を考え、歌を書いた。そのときに海の真ん中にひとりぼっちでいるこの悲しい火山、主人公・ウクの彫刻を作ったんだ。それで、僕が作品に着手するときに、この彫刻と、これらのスケッチと、ウクレレを持って、この歌を歌ったんだ」と話すと監督自ら映画の中の歌を披露。このラブソングを聴いたジョン・ラセターは作品に入れ込むときに伝統的なハワイアン・シンガーに歌を歌ってもらうことを条件にしたという。「ハワイアンのグラミー賞のようなアワード・フェスティバルに向かい、一緒に仕事をしたいと思う人たちに会うことが出来たんだ。それから収録をして出来上がった。僕は、サウンド・トラックでウクレレを弾いたよ」。極上のラブソングと火山…繋がりのなさそうな2つを見事に融合させたジェームズ監督。最後に教えてくれたのは、この繋がりに隠されたシンプルなことだった。「これは巨大で小さなラブストーリーなんだよ。巨大なものがあり、とても小さなものがある。サウンド・デザインでさえそうだった。ウクレレと美しい歌声があるだけなんだ。とてもシンプルで、小さい。でも、巨大なんだ。常にそういうコントラストを使うんだよ。僕はそういうところが大好きでね。もしそういうことが上手く出来れば、大きなスケールだけど、とても身近かなことで、誰もが共感出来ることを描けるんだ。ただ、愛する誰かと一緒になるということをね」。