まずは8時半から、「批評家週間」部門のフランス映画で『Learn By Heart』という作品へ。フランスの郊外にある低所得者用団地に暮らす黒人の少年が、不本意ながらもドラッグ売買に関わり、しかし本来の真面目な性格が未来を切り開く様を描く物語。治安の悪い郊外とマイノリティー社会、というのはもはやひとつのジャンルを形成していると言っても過言ではなく、本作もそのフォーマットに則り、商業ベースにも乗れる見易さを備え、可もなく不可もなし、といったところ。
僕は処女作の『Regarde les hommes tomber』(94)からオーディアールのファンで、これまでの全ての作品を愛しているけれど、本作はいささか凡庸であったかもしれない。いや、凡庸という言葉は言い過ぎかもしれないけれど、犯罪ものや刑務所ものなどの既存のジャンルに常に新しい風を吹き込んでいたオーディアールにしては、物足りなさが残ってしまった。
すぐに上映の列に並び、14時からこれまたフランス映画のコンペ作品『Valley of Love』(写真)へ。監督は、近年進境の著しいギヨーム・ニクルー。主演がジェラール・ドパルデューとイザベル・ユペール。スターの競演に、フランス人の観客がどっと押し寄せる。会場内のスクリーンにレッド・カーペットの模様が映され、ドパルデューが登場すると場内がどよめく。さすがだ(ナマで見られず残念!)。