『All About Them(英題)』という作品で、感情の機微を丁寧に描くことに定評のあるボネル監督らしく、繊細で美しい作品。ひと組の男女のカップルのそれぞれと付き合うことになる女性を主人公とする内容で、つまり三人の男女がそれぞれに関係を持っている。こじれない三角関係というか、いわゆる三角関係の変形版で、なさそうで意外にありそうかもしれない設定が面白い。クローズアップを多用するスタイルが功を奏していて、カメラが各人物に近く、細かい感情の動きが見る者にも十分に伝わってくる。ある意味フランス映画らしいのかもしれないけれど、やはりボネル監督は上手い。とても満足。
16時からのコンペの上映はチケットが取れていたので、それでも1時間前には列に並んで、無事に入場。初監督作品で見事にコンペ入りした、ハンガリーのラズロ・ネメス監督による『Sun of Saul』(写真)。初監督作がコンペとは、一体どんな作品であろうと期待が高まっていた中、はたしてその期待を見事に凌駕する傑作であった。
「ある視点」部門の韓国映画で、オ・スンウク監督による『The Shameless』。オ・スンウク監督は『8月のクリスマス』の脚本で、監督作は2000年の『キリマンジャロ』に次ぐ2本目、ですね。主演はキム・ナムギル。凄腕の若い刑事と、ヤクザ者とその情婦の3人の関係を巡るハードボイルド・ドラマ。雰囲気はとてもあるのだけれど、展開がいささか単調に思えてしまい、いまひとつ入り込めず、残念。いや、少し疲れてしまったこちらに問題があるのかも。『Sun of Saul』の衝撃が尾を引いていた、と言ってもいいかもしれない…。