橋田壽賀子ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」スペシャルが2週連続で放送となるのを前に1月26日(月)、TBSにて脚本の橋田壽賀子と長年タッグを組んできた同作品の石井ふく子プロデューサーが報道陣の取材に応じた。1990年から21年にわたって計10シーズンが放送され、その後も2012年、13年にスペシャルドラマが放送され、計505回で平均視聴率は20.5%という驚異的な数字を記録。一家の大黒柱である岡倉大吉を第1シーズンから第7シーズンまで藤岡琢也が演じてきたが、藤岡さんが2006年2月に病気のために降板し、同年10月に亡くなった後、宇津井健が“2代目”として演じてきた。その宇津井さんも昨年3月に逝去。宇津井さんの死後、初めての放送となる今回、大吉が年の瀬に急逝したという設定で、5人の娘たちが岡倉家、大吉が遺した小料理屋「おかくら」の“これから”について話し合うことになる。新たな“3代目大吉”を立てるのではなく、大吉が急逝したという設定について石井プロデューサーは、橋田さんと話し合い「3人目はやめよう。お父さんへの娘たちの気持ちをドラマにしようと決め、大黒柱を立てないことにしました」と説明。過去には、岡倉家の母を演じた山岡久乃、そして藤岡さんとドラマ進行中にメインキャストが亡くなったが、橋田さんは宇津井さんの死を受けて「3人が亡くなって、『やめよう』と決めたんですが、どこに行っても『鬼』はいつやるの? と聞かれるんです。しまいにはやらないと悪いような気がしてきて…(苦笑)。20年前は若かった世代(=嫁の立場)が、いまは“鬼”の世代(=姑の立場)になってきて、これから新しいドラマができるのでは? と思った時に会社からお話をいただきました」と一度はやめようと思った本シリーズを新たに書くことになった経緯を明かす。その上で「いま、一番問題になっている『相続』を書かせていただきたいと思った」と5人の娘たちが、大吉が遺した遺産をどのように相続していくかが大きな軸となっていると語った。石井プロデューサーは88歳、橋田さんは90歳だが、2人ともこの日の会見でも年齢を全く感じさせないハキハキとした口調で報道陣の質問に答えていく。何歳まで現役で執筆を続けるつもりか? という質問に橋田さんは「もう90ですから老衰ですよ…」とボヤきつつも口調は元気そのもの。「まだ書きたいことがある内は、会社が『書かせてやる』と言ってくれる限りは書きたい」と宣言。実際、家族の問題についてはまだまだ書きたいことがあるようで「当主がいなくなったらおしまいと思ってたけど、家族がいっぱい育ってる。老人問題、子どもの育て方…他にも書きたいことがあったら、(新作ではなく)『鬼』で書くのが楽なので(笑)、それが一番かと思ってます」とさらなる続編も示唆した。本作の25年だけでなく、橋田さんはキャリアを通じてずっとホームドラマを書き続けてきた。昨今では刑事ドラマや医療ドラマが視聴率を獲得し、以前よりもホームドラマが製作されることが減っているが、橋田さんは「私はホームドラマしか書けないし、好きなんですね。『うちでも同じことが』という投書をいただきますが、この(ドラマの)家族はこうやって解決したと出すことで、身近に感じてもらえるのでは?」とホームドラマの意義を語る。長年にわたって、橋田さんのドラマを支え続けてきた石井プロデューサーは「何でもない普通のドラマを書ける作家がいなくなった。橋田さんはそれが書ける。すごいことです。(25年前に本シリーズを)始める時に2人で『これでダメならやめよう』と言ってたんですが、まだまだ!」と時代が進んでも、世の中はまだまだホームドラマを必要としていると熱く語った。「渡る世間は鬼ばかり」スペシャルは2月16日(月)21:00~、2月23日(月)21:00~の2週連続で放送。
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